AIが大きく変えると言われている業種の1つが小売業である。実際に、AIを導入することで、売上を大きくアップさせた小売り企業も存在する。一体、AIはどんな貢献をしてくれたのだろうか?AIの分野で日本をはじめシンガポールやドイツでも活躍する若者、株式会社ABEJA・岡田陽介社長に聞く。(経済ジャーナリスト 夏目幸明)

AIを入れれば
小売りの現場は一変する!

熟練の発注スキルを持つ店長すら上回る性能を見せるAI。普及すれば流通業が大きく変化するのは間違いないが、果たして人間はAIに駆逐される運命なのだろうか…?

夏目 前回まで「ディープラーニング以前のAIがなぜ『ブーム』で終わったか」、そして「現在のAIはどんな仕組みで、なぜブームでは終わらないのか」を聞きましたね。今回はせっかくだから、AIが産業でどう役立つか教えてください。

岡田 まずは小売店が一変します。

夏目 「百貨店やスーパーマーケットがAIを導入」なんてニュースを見ても、だからどう変わるのかわからなかったんだよな。

岡田 じゃあ、仮に舞台をスーパーマーケットにしましょう。まず、仕入れが変わります。何曜日の何時にどんな商品が売れたか、POSのデータをAIに「ディープラーニング」(連載第2回を参照)させていきます。すると、いままで店長さんが行っていた発注作業をAIが代行できるようになります。しかも、店長さんの経験やカンより正確、かもしれません。

夏目 なんと!

岡田 小売店は品切れを起こしたら機会損失になります。しかし生鮮など賞味期限が短いものは、仕入れすぎると売れ残り、破棄しなければなりません。だから今までは、店長さんが熟練のカンで「今日は絹とうふを何丁、木綿を何丁」といった具合に仕入れていました。

 AIは膨大なデータから、その「カン」の部分も学んで自動で発注してくれます。過去のデータの天候や気温とリンクさせれば「暑い日は絹が売れ、寒いと木綿が売れる」といったことも学習していきます。さらに、店長さんが気付かなかった法則性も認識できます。「なぜか4月1日~3日だけ、男性向けの弁当がいつもより少し売れるから仕入れましょう」とAIが言い出したとします。そこでお店の人が理由を調べると、毎年この期間は近所の〇〇建設さんの社員研修で若い男性が集まっていた、といったことが分かったりします。

 もちろんAIは「〇〇建設さんの社員研修がある」と知っているわけではありません。でも、「毎年、4月の1~3日は男性向けのお弁当がいつもより売れる」、「ただし休日の場合は関係ない」、「気温や天気も関係ない」――といった具合に、人間の直感では見逃していたデータを捉え、「このお弁当をいくつ」とアウトプットしてくれるんです。

 私の会社は小売業の顧客企業向けに、こうしたシステムを提供していますが、「いままで1時間かかっていた発注作業がボタン1つになった」といった声をいただいています。