差し迫った人命の危機という観点では、「ある程度の人口を抱える無医村に診療所を建てる」ことを優先すべきかもしれない。無医村の状況によっては、例えば前述したような山奥に5人だけ住んでいるような村であれば、診療所を建てるのではなく、住人全員に引っ越してもらった方が望ましい場合もある。

 筆者としては、防災対策を充実してほしいと願っている。大地震がくると言われている割には、耐震性に問題がある建物やインフラが多すぎる。建物の倒壊などによって人々の逃げ道がふさがれるような事態になれば、大規模な火災などによって犠牲者が大幅に増加してしまう。

 人間である以上、どうしても目の前の末期がんの高齢者に意識が向いてしまうのは仕方ないが、想像力をたくましくして、見えていない将来の被災者を助けることに資金を優先的に振り向けるべきではなかろうか。

利害関係を最終的に
調整するのは政治の役割

 各自がそれぞれに利害関係を持っている場合、最後に調整するのは政治の役割である。

 政治は、100歳の末期がん患者の利害、離島に住む小学生一家の利害、無医村に住む人々の利害、大地震の被害が想定されている地域住人の利害、そして納税者(健康保険料支払い者を含む)の利害など、さまざまな利害関係者の優先順位をつけなければならない。全ての人々の希望をかなえることは不可能なのだから。

 日本が、高額のがん治療薬を健康保険適用除外したら、日本のがん治療薬研究が進みにくくなる可能性もある。また、金持ちだけが高額抗がん剤を使えるようになってしまうかもしれない。