1月14日、厚生労働省で「先進医療会議」が開かれ、来年度から新たに健康保険を適用する治療について最終的な評価が行われた。

 審議の結果、評価対象となった63の先進医療のうち、14技術に対して保険適用が認められることになった。そして、2016年度の診療報酬を決める中央社会保険医療協議会(中医協)に審議結果が報告され、1月20日に正式に保険導入が決定した。

粒子線治療施設は全国で続々と作られている。写真は陽子線治療を行う静岡県立がんセンター

 今回の審議で注目を集めたのが、民間保険のテレビCMのおかげで一躍有名になった「陽子線治療」「重粒子線治療」の処遇だ。

 この2つの粒子線治療は、これまで転移のない固形がんであれば、先進医療の対象となっていたが、従来からある放射線治療と比べた優位性に疑問符がつき、先進医療から外される可能性も噂されていたからだ。

 しかし、ほかには有効な治療法がないなどの理由で、今回は小児の固形がんに対する陽子線治療、切除できない骨がんへの重粒子線治療に限定して、健康保険の適用が認められることになった。だが、その他のがんに対しては、粒子線治療の有効性がいまだに明確になっていないため、先進医療の枠組みのままで継続される。

 今回は、首の皮一枚で先進医療に残留した粒子線治療だが、実は多くの問題点も指摘されている。

「先進医療」は夢の治療ではない
むしろ標準治療よりも格下

 粒子線治療は、悪性新生物(がん)に対する放射線療法のひとつで、照射する放射線の種類からそう呼ばれている。

 放射線療法は、病巣に放射線をあてることで、がん細胞の増殖を抑えたり、消滅させたりする治療で、従来からあるのがエックス線やガンマ線などの電磁波を用いたものだ。

 これに対して、粒子線治療は水素の原子核・炭素の原子核などの粒子が使われる放射線療法だ。加速器でエネルギーを高めた粒子を照射して、がん細胞を破壊する。体の内部に潜んでいるがんの病巣をピンポイントで狙い撃ちできるので、周囲にある正常な細胞へのダメージを抑えられるといわれている。

「切らずに治すがんの最先端治療」などと紹介されてきたせいか、従来からあるエックス線やガンマ線による放射線療法よりも効果が高いイメージをもっている人も多いのではないだろうか。