「フェラーリの事故なんて聞いたことない。高級車だけあって安定性も良いはずなのに……。自分は乗ったことさえないけど」(山口県警幹部)
山口県の中国自動車道で4日、フェラーリやランボルギーニなどの高級スポーツカーを中心に14台が大破した多重衝突事故。被害総額は2億円から3億円とも試算され、「世界で最も高額な事故」として、国内外で報道された。
幸いにして死者や重傷者はいなかったものの、事故車の内訳は、フェラーリ8台、ランボルギーニ1台、ベンツ3台。もっぱら気になるのは、事故を起こしたドライバーに、保険金が支払われるのか否かだ。
大手損保によると、「故意による事故、もしくは、運転者の重大な過失が判明すれば支払われない」という。今回の事故は、さすがに故意ではなさそう。では「重大な過失」に相当するのか? 事故の概略を振り返ってみよう。
県警によると、現場は片側2車線の上り線左カーブで「以前から事故が絶えない現場だった」(県警幹部)という。
運転者の大半は、福岡県在住の高級スポーツカー愛好家。計20台前後で車列を組み、広島県に向かう途中だった。事故の発端は、先頭から数台目を走っていた60歳の自営業男性の運転するフェラーリF430が追い越し車線から走行車線に車線変更しようとして、運転を誤りスリップしたと見られている。
県警に対し、男性は「指定速度以上で走っていた」と話しており、指定(最高)速度時速80kmに対し150km前後のスピードで走行していたとの目撃情報もあることから、県警は、安全運転義務違反も視野に男性らから事情を聴いている。
さて、仮に指定速度の倍近いスピードだったとした場合、それでも車両保険は出るのだろうか。
大手損保幹部によると「難しい判断だが、飲酒運転していたわけでもなく、経験上、支払われる可能性の方が高いと思う。『重大な過失』と判断するハードルはそれほど高い」と話す。
ちなみに、フェラーリの年間保険料は、一般国産車のなんと10倍が相場だ。対人・対物無制限で、車両保険2000万円とすると、ある大手損保では、若年層で150万円ほど、40歳前後で60万円ほどになる。損保会社にとって高級車ドライバーは「車に傷一つつけないよう大事に乗り、事故もめったに起こさない」と言い、山口県警が把握する昨年のフェラーリ事故は自損の1件のみ。
それだけに「ひとたび事故が起きれば、支払額も半端じゃない」と前出の大手損保幹部。高額な車は、その保険金もまたセレブだ。
(「週刊ダイヤモンド編集部」 宮原啓彰)