欧州債務問題に端を発するリスク回避相場は、依然として予断を許さない状況が続いています。
ただ、1つのクライマックスを迎えているのではないのでしょうか?
「ドラギ・ショック」で悲観論が急拡大
12月8日(木)のECB(欧州中央銀行)理事会後の会見におけるドラギ総裁の発言により、EU(欧州連合)サミットなどの結果を受けて、ECBが支援強化に動くとの期待が裏切られたようです。
これがいわゆる「ドラギ・ショック」となり、悲観論があらためて急拡大しているように感じます。
足元のマーケットの期待とは、「資料1」のようなものだと思います。
つまり、ドイツはEUサミットで財政規律の強化を要求しているわけですが、その要求が達成されることを条件に、危機回避に向けてイタリアなどの支援拡大に動く覚悟を決めているのではないかということです。
これを財政規律強化と支援拡大を取引するといった意味で、市場関係者の間では、「世紀の取引(グランド・バーゲン)」といった見方がなされてきました。
その支援策強化の主役として期待されていたのがECBだったのです。
とくに、ECBがIMF(国際通貨基金)への融資を通じて欧州の債務不安のある国の支援に動くということは、ECBのルール上も容認されるとの解釈がありました。
ところが、理事会終了後の会見で、ドラギ総裁が慎重な姿勢を見せたことから、一気に失望が広がったのもわからなくはないところです。
「世紀の取引」シナリオは崩れたのか?
さて、これで「世紀の取引」が成立するシナリオは崩れてしまったのでしょうか?
正直言って、「世紀の取引」シナリオを想定していた私からすると、よくわからないというのが本音ではあります(「EU『世紀の取引』成立で為替はどう動く?ISM指数の改善はドル高へのシグナルか」を参照)。
その一方で、「世紀の取引」が成立する、しないとは関係なく、クライマックス局面にあるといった意味は変わらないと考えています。
「資料2」はユーロのポジション動向ですが、すでに記録的な売り越しになっています。
その意味では、さらなるユーロ売りの余地が限られている状況に変わりはないと思います。
そもそも、「世紀の取引」の成立による金融市場への「効果」が期待されたのも、ユーロが売られ過ぎで、さらなるユーロ売りの余地に限界があると考えられたことが基本でした。
金融市場がユーロ売りの「余力」をたっぷり抱えている中では、「世紀の取引」が成立しても効果は限定的でしょう。
以上のようなことから、ユーロの売られ過ぎが記録的な規模にある状況下では、「世紀の取引」が成立する、しないにかかわらず、ユーロ売りはやはりクライマックス局面にあると思うわけです。
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