以前にゴルフの公式戦にマウスピースを使用して失格になったプロゴルファーがいた。マウスピースで「飛距離が伸びる」という理由がルールに抵触したからだ。マウスピースを使うとスポーツ競技のパフォーマンスが向上するのか。スポーツ時におけるマウスピースの有用性とは何か。筆者が歯科医師の立場で解説する。(歯科医師・歯学博士・日本歯科総合研究所代表取締役社長 森下真紀)
マウスピースを使用したプロゴルファーは
なぜ失格になってしまったのか
数年前に遡るが、国内男子ゴルフ公式戦において、あるベテランのプロゴルファーが“あるもの”を使用していたとして失格となった。
そのあるものとは、ラウンド中に装着していたとされる「マウスピース」。
マウスピースの使用目的が、咬み合わせが悪いための治療、もしくは強い噛み締めから歯を守るため、といったものであれば、ゴルフの競技上マウスピースの使用は禁止されておらず、装着してラウンドを回っても何ら問題はない。
では、なぜ、そのプロゴルファーは失格となったのか。その理由は、「マウスピースをつけると飛距離が伸びる」という、競技中に発せられた彼の一言である。
ゴルフ規則には、「人工の機器と異常な携帯品、携帯品の異常使用」という項目があり、プレーする上でプレーヤーの援助になるようなものを使用することは禁止すると規定されている。そのため、彼のその一言によって、「器具、すなわちマウスピースを異常に使って飛距離を得ている」と裁定され、結果として失格処分が下されたのである。
現在、日本国内では一部のスポーツにおいて、マウスピースの装着が義務化されている。例えば、ボクシングの試合で、ボクサーがラウンド開始時にマウスピースを装着する場面をよく見かけるが、ボクシング等の危険性の高いスポーツでは、マウスピース(マウスガードと同義)の装着が義務付けられている。