一つの比喩を考えるなら、銀行は、「お金」とそのやり取りがデジタル化することに伴って、携帯電話ができ、さらにスマートフォンが普及して、めっきり使うことが減った固定電話のような存在になるのかもしれない。

 これまで銀行は、金融業界の中で行政から特別扱いを受けてきたといっていいだろう。行政は、金融システムを安定させるために、投資信託や保険の販売を認めるなど銀行に新たな"食い扶持"を与えてきた。しかし、国を超えた単位で進む技術の変化には対応しきれないかもしれない。銀行員全員が食えるようなビジネスを新たに銀行業界に与えることは難しかろう。

 銀行が、いい人材を確保したいと本気で思うなら、グループ内に先端的な子会社を作って、優秀な学生に1年目から2000万〜3000万円レベルの年収を払うような方策が必要だろう。しかし、そうした子会社を経営して、優秀な人材をさらに育て、加えて有効に活用できるような経営人材が、果たして今の銀行にいるのだろうか。

若手行員はどうしたらいいか

 大人としては、学生の就職先の心配ばかりでなく、既に銀行に勤めている若手行員のことも案じるべきだろう。

 28歳くらいまでの若手行員は、業種を大きく変えるような転職も可能だ。銀行で面白い仕事をさせてもらえそうにないと思った場合には、今後、「人材価値」を築くことができる職種に変わることを検討していいのではないだろうか。前記の地銀の幹部が言う、就職先としての銀行の「ブランド価値」がまだ残っているうちに、少しでもいい転職先を見つけたい。

 また、行内に残る場合は、トレーディング、M&A、国際金融、システム開発など、何らかの専門職的なコースを指向すべきだろう。証券、運用会社などグループ会社に早めに転籍するのもいいかもしれない。大事なのは、外でも通用するような技術や知識の背景を持った人材価値を早く作ることだ。

 難しいのは、30代前半くらいで、少し仕事が面白くなってきて、一次選抜では昇格できたという程度のプライドを持っている行員だろう。

 転職する場合の候補先は、外資系企業や金融の他業態など、それまでの仕事で築いた人材価値に関連した先になるだろう。ただし、外の会社から見て、30代前半であれば人材として使いでがあると思って採ってもらえる可能性があるが、職業人生の最も充実した時期を数年、漫然と銀行に捧げてしまうと、転職者としての価値が下がり始める年代に差し掛かる。