兆候を見抜くには
「縦の変化」と「横の変化」を見る

秋山 よく、一片の兆候の情報から、大きな変化や大事を予測する能力に長けた人の話が軍事にせよビジネスにせよ、多くの武勇伝で披瀝されます。そういう兆候を捉えるために、普段からどんな思考や行動をすればよいのでしょうか。

上田 「縦の変化」と「横の変化」を考えることが大事です。

「縦の変化」とは、経年変化のことです。この街並みは以前とは違って最近活気が出てきた、なぜだろうと思うこと。「横の変化」は、この一角は周辺とは異なって、きれいな家が多いなとか、なぜあの家だけはカーテンが閉まっているのかと考えることです。

 変化に気づくためには、あらゆるものに興味を持つことが欠かせません。閉まったカーテンなどは犯罪が起こったあとに、「そういえばいつもあの家はカーテンを閉め切っていた」という証言が出たりするものです。

 変化…つまり兆候が何を意味するのかを判断できれば、将来を予測できる可能性があります。インテリジェンスの究極は、意図と能力から行動を予測するということになるのですが、それを見極めるための材料のひとつが兆候です。

 また歴史の例を挙げましょう。

 第二次世界大戦時、アメリカの海軍大佐のザカリアスは日本海軍の奇襲の兆候に気づいていました。あらゆる航路から日本商船が引き上げられ、無線通信が増加し、ハワイ航路に日本の潜水艦が出没していたからです。日本軍でも、堀栄三という人が、缶詰と医薬品の株価が上昇したことで、米軍による島しょ侵攻を予測していました。

 もちろん、勝手な思い込みで兆候だと信じるのではなく、妥当性という尺度で見直す必要があります。ある出来事を見たら必ず、それと関連ある出来事、それの背景にある出来事、歴史制度といったものを把握する癖が必要です。この関連思考法によって、一片の兆候からその背後にあるものを洞察する力が養えると思います。

秋山 時間と空間の二点でものごとの変化を捉えられるようにしておくこと、そして普段から引き出しをたくさん持っておき、さまざまな連想を働かせられるようにしておくということが必要ということですね。

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