新幹線のぞみで重大インシデント
察知した異常が放置された「異常」
まずはけが1人も出なかったことは幸運だった。12月11日午後5時3分、名古屋駅で停車したJR西日本の博多発東京行き「のぞみ34号」13号車の鋼鉄製の台車に亀裂が入っていたことが発覚。新幹線として初の「重大インシデント」に認定された。
後に報道されたテレビ画面を見ると、鋼鉄製の台車は17センチのうち14センチまでぱっくりと亀裂が入り、破断寸前の状態だった。時速200キロ超で走行中に台車が破断すれば、脱線を伴う大事故につながっていた可能性は十分にある。
今回のインシデントの問題は、異音や焦げたような異臭を検知して岡山駅で乗り込んだ保守要員が、「停車させて検査をしたほうがいい」と進言したにもかかわらず、東京の指令所が「支障はない」と判断して、そのまま走行させたことにある。
その際のやりとりについては、JR西日本が現在調査中ということだが、新幹線が新大阪駅に到着し、JR西日本からJR東海に引き継ぐ際には「異常はない」とされていたという。
記者会見でJR西日本のトップは「停車できなかったことは問題だった」と語っている。まさにその通りなのだが、なぜ異常を検知した現場がすぐに新幹線を止めることができなかったのだろうか。
実は、このように「とっさの判断」が求められるケースは、ビジネスの様々な現場で起きている。うまく対応できる現場もあれば、そうでない現場もある。その違いは何なのか。他社の事例を紹介しながら、今回のアクシデントについて、今後どのような点が解明され、修正されていくべきなのかを考えてみよう。
まずは良い事例から。トヨタ自動車の工場では、工員がラインを自分の判断で止める権限が与えられている。作業中に何かの不都合や問題を発見した工員は、誰でも即座にラインを止めるべきだということになっている。そのことで咎められることは一切ない。