正常とは何かを知り
わずかな異変を感知する

●6 異常を察知する

 正常の状態を成立させている条件を明確にしたうえで、状況をよく観察し、異常を察知する。

 ゴルゴは、襲撃された車中での振る舞いを観察して、最初に教えられていた貴族がターゲットではなく、執事こそが真のターゲットだと気づく(68)。会釈なのに、不自然でわざとらしい礼をした記者を偽日本人と見破ったり(84)、文官と武官は筋肉の動かし方が違うことから替え玉だと察知したり(88)、なじまない香水の香りから、女性を工作員と見抜いたりする(22)。

 ビジネスにおいては、わずかな異常を検知できるかどうかが成否の分かれ目となる。惨事を防ぐポイントになることも多い。何を見るか、何をノイズとして無視するかの見極めができる観察力を鍛えることが肝要だ。そのためには、定点観測が重要であり、一回一回の経験値を蓄積して、何が正常であるか(標準)を把握することが重要である。

●7 腕のいい技術者や職人を味方につける

 腕のいい技術者や職人を「正しく」、「高く」評価し、プライドを掻き立てることで、最大の成果を生み出す。

 ゴルゴは、武器職人ベリンガーが8年がかりで探し求めたバレル(銃身部分)を最高の技術で加工して本体に組み込んだ、アーマライトM16A2というライフル銃を手にとり、「いいバレルだ……A2とのマッチングもいい」と評価してベリンガーを喜ばせる(100)。

 また、ゴルゴは、これと見込んだメークアップアーティストに、メークアップ料としては破格のギャラを即金かつ前金で支払い、完璧な変装を依頼する。「俺の腕を信用して、わざわざ俺を指名したんだろっ!?この俺が、素人に見破られるようなメークアップをするものか!!首を賭けてもいいぜっ!!」と意気に感じたアーティストは依頼どおりの仕事を完璧に施したおかげで、ゴルゴは別人になりすまして潜入に成功する(127)。

 また、ある調査の実施を尻込みする海洋構造物建築家に、その建築家が過去に発表した論文の重要部分を的確に指摘し、奮起させ調査を引き受けさせたりもする(167)。

 腕のよい職人は、報酬の多寡だけではなく、“違いがわかる人”のために働く。ビジネスにおいて、自分の力ではできないことを、一流の腕を持つ専門家や職人に依頼する局面も多々出てくるだろう。そんなとき、専門家のプライドをくすぐる言葉をかけ、職人技の勘所を見抜いてそれを評価するのが、一流の職人に最高の仕事をしてもらうコツである。正しく評価されたプロは、評価してくれた人に対して、プロ同士が持つ親近感を抱くものなのだ。

 前編はここまでだが、私の人生にとってもっとも大きな影響があったのは、「臆病であることの積極的な評価」である。子どもの頃から「男の子にとって臆病は恥」と言われて育った。しかし、「臆病であるがゆえに徹底的に準備をすることで初めて勇敢になれる」というゴルゴの言葉は、心に沁みた。その後、著名な経営者などから教えを乞うことも多かったが、ほとんどの方が「臆病でなければいけない」と同じことを述べておられた。

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