食えない弁護士が増えた昨今だが、一部とはいえ「1年目から年収1000万」を実現しているスーパーエリートもいる。ワーキングプア弁護士とエリート弁護士の違いは一体どこにあるのか?“弁護士サバイバル”で明暗を分ける3つの要素を解説する。(フリージャーナリスト 秋山謙一郎)
食える弁護士の条件
「成績」の重要性
食えない弁護士が激増した一方、一部のエリートに限ってだが、「新人でも年収1000万円」を実現している弁護士もいる。弁護士業界のスーパーエリート、渉外弁護士である。
もっとも、渉外弁護士になるためのハードルは非常に高く、大学在学中から選別は始まっているともいえる。
大学院卒業までの間に浪人・留年はせいぜい2年まで、加えて卒業後、なるべく早い段階で司法試験に上位合格し、「二回試験」と呼ばれる司法修習所修了時の試験を上位でクリア――これらの好条件を持つ者は、よほど本人の素行に問題のない限り、「任官(裁判官になること)の声が掛かるか、渉外系大手法律事務所から就職の声がかかる」(元大阪府弁護士会副会長)。
さすが資格試験だけあって、一握りの成績上位者にはエリートへの道が約束されるのだ。
弁護士1人当たり約1億円稼ぐといわれる渉外系大手法律事務所のトップは、「有名な西村あさひで1億円と聞く」(大阪府弁護士会所属弁護士)というほどの高給取りだ。トップばかりではない。検察庁高官を定年で退職し、弁護士登録後、西村あさひに「顧問格」で転じた人の場合、「3000万円程度だった」という声もある。パートナー弁護士として活躍する弁護士ならば、「低く見積もっても5000万円、1億に届くか、届かないかではないか」(前出・同)と言われている。
「成績」に次いで、食える弁護士の条件となるのは「学歴」、つまり難関大や有名大出身であるか否か、だ。
たとえば旧司法試験で合格者を数多く輩出した東京大学法学部生を例に取ると、中位の成績の者でも地方の中堅事務所、試験成績が振るわなかった者でも、地方の街弁にイソ弁として就職できた。東大法学部を出てさえいれば、「何とかなった」のだ。京都大学、早稲田大学、中央大学といった、法曹を数多く輩出している有名大学も同様の傾向が見られた。司法制度改革で合格者が増え、現行司法試験に変わった後も基本的に、この傾向に変わりはない。