2番目の理由に移ろう。力が落ちてきたとはいえ、世間の注目を集める番組はまだまだ多い。サッカー日本代表の試合は、たとえ親善試合でも相変わらず高い視聴率を集める。人気ドラマシリーズの『相棒』『ドクターX〜外科医・大門未知子〜』(ともにテレビ朝日系)は新しいシーズンごとに高視聴率を記録する。

「そういう番組がある限り、テレビは大丈夫じゃないか」という意見がある。テレビ業界的にはそういう見方はあると思うが、経営学的に見るとこの現象はちょっと違って見える。少なくとも他業界であれば、このような場合、パワーシフト(力学の移行)が必ず起きる。

「局の力」は薄れつつある
米国では鮮明なパワーシフトが

 日本ではまだパワーシフトが暗黙でしか認識されていないが、資本主義先進国のアメリカでは、すでにそれが鮮明になっている。1990年代から、ラリー・キング、ビル・コスビー、ウーピー・ゴールドバーグといった数字がとれる出演者の地位が、現場の力関係だけでなく、収益の取り分でもテレビ局より上になっているのだ。

 アメリカがなぜ先にそうなったかというと、ケーブルテレビの普及による多チャンネル時代が日本よりも先に訪れたからだ。地上波の視聴が全視聴の25%程度に落ち込む中で、パワーがテレビ局よりも人気番組の出演者や権利者に移行した。

 日本の場合、局の力が強いうちは人気番組を終わらせて次の番組を育てることができるし、スポンサーに対してはおいしい番組以外の枠も抱き合わせてCMなどの計画を立ててもらうこともできる。

 しかし、視聴者に見てもらえる番組と見てもらえない番組の差が開いていくと、この構造は維持できない。こうした点においても、そろそろテレビ業界のビジネスモデルに限界が見え始めている。

 そして3つ目の理由に、アマゾンに代表される新興プレーヤーの参入がある。実は、テレビ業界が凋落しているにもかかわらず、世間で信じられているほどインターネット広告市場は伸びていない。市場規模は今でもテレビの半分以下である。

 理由は、従来のインターネット広告は「アクション(直接の購買行動)」を起こさせるところが守備範囲で、テレビのように「アテンション(注目を集める)」の部分を担当していなかったからである。しかし、1日中スマホを眺める消費者がここまで増えてくると、アテンションもスマホに任せるという新しい流れが出てくる。