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スマートフォンの理想と現実

年越しの「あけおめ」メールは自衛のためにも自粛を
多くの疑問符が残ったNTTドコモ「spモード事件」

クロサカタツヤ [株式会社 企/株式会社TNC 代表]
【第14回】 2011年12月28日
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 それほど難しいならやめてしまえば…というわけにはいかない。まずなにより、スマートフォン普及の流れを止めることは、もはや通信事業者であっても困難であろう。また前述のEPCはすでにLTEのコアネットワーク技術として標準化が完了している。一方で、spモードのようにレイヤーを統合管理することで、スマートフォン時代にも認証・課金機能を提供しなければ、通信事業者の存在意義は希薄化してしまう。

 やはりここは、逃げずに正面から問題に取り組まなければなるまい。おそらく今回はそうした決意をしたのだろう、NTTドコモは山田隆持社長を本部長、辻村清行副社長を副本部長とする「ネットワーク基盤高度化対策本部」を25日付で設置した。しかしおそらく現状はまだ問題の構造さえも把握できていないのか、冒頭で紹介した「spモード不具合に伴うお客様への影響と今後の対応について」では、今回の不具合の構造欠陥である可能性の高いアクセス制御や認証技術について、具体的な言及はほとんど皆無である。

「あけおめ」メールは自粛を

 状況を判断するには、まだ開示されている情報が極めて少ない。従って楽観的に考えれば、事態はそこまで深刻ではないかもしれない。前述の崎村氏が指摘しているような問題の構造についても、今回の不具合を受けて、アクセス制御や認証方式の多重化を施したり、回線側の制御によってサーバの負荷が高まらないような対応が、急ピッチで進められているはずだ(と信じたい)。

 しかし、仮に専門家が懸念している通り、そもそもspモードの技術的な構造自体に重大な欠陥があるのだとしたら、そこに手をつけない限り、いくらサーバの容量を増やしたところで、付け焼き刃の対応に過ぎない。しかも、1年で最もトラフィックが集中するとされる、日付が変わった1月1日午前0時0分が、あと数日後に迫っている。

 かくなる上は、情報漏洩に対する自衛も含め、spモードを利用している方々は、「あけおめ」「ことよろ」メールを控えた方がいいかもしれない。あるいはspモードに限らずすべてのケータイ利用者も、今年に関しては朝起きてからの「あけおめ」メールでいいのではないだろうか。

 そしてNTTドコモには、今回のspモード不具合を直視した上での徹底した情報開示を通じて、看板の通り「高度なネットワーク基盤」を、ぜひ実現していただきたい。今回の検証結果や対策を、通信業界はもちろん一般に向けても公開し、日本のスマートフォン・インフラ全体の高度化を推進してこそ、信頼を回復できるはずだ。これはケータイ産業をお手伝いする人間としての、来年に向けた切なる願いでもある。

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クロサカタツヤ
[株式会社 企(くわだて)代表取締役、慶應義塾大学特任准教授]

1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修了後、三菱総合研究所にて情報通信分野のコンサルティングや国内外の政策調査等に従事。その後2007年に独立し、現在は株式会社企(くわだて)代表として、通信・メディア産業の経営戦略立案や資本政策のアドバイザー業務を行う。16年より慶應大学大学院政策・メディア研究科特任准教授。


スマートフォンの理想と現実

2011年はスマートフォンの普及が本格化する年になる…。業界関係者の誰しもがそう予感していた矢先に発生した東日本大震災は、社会におけるケータイの位置づけを大きく変えた。しかし、スマートフォンの生産に影響が及びつつも、通信事業者各社はその普及を引き続き目指し、消費者もまたそれに呼応している。震災を受けて日本社会自体が変わらなければならない時に、スマホを含むケータイはどんな役割を果たしうるのか。ユーザー意識、端末開発、インフラ動向、ビジネスモデル等、様々な観点からその可能性と課題に迫る。

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