バイトが大量離職の申し出に
リーダーはどんな行動を?

「え?そんな話、聞いてないぞ。社長も知らないんじゃないか?」

 梅田たちが竹山リーダーにアルバイト全員で一緒に辞める話をしていた時、梅田から罰金制度の話を聞いて、竹山は驚いた。竹山は普段、アルバイトのいる現場とは違うところにいるため顔を合わせる機会が少ないが、たまに事務所で接すると、いろいろと気にかけてくれる面倒見のいい社員だ。

「確かに、遅刻したのはこちらも悪いのですが、クレームについては、俺らも言い分があります。ましてや、本当にクレームが来たかどうかなんて、俺らに分からないじゃないですか。罰金を皆の飲み会に使うとか言ってましたけど、そんな様子もないですよ」

 竹山は「自分が話をするから、退職は待ってほしい」と言って、アルバイトたちを何とか思いとどまらせた。

「部長、バイトたちから罰金を取っているって本当ですか?」

 松岡は、面倒くさそうに竹山を見ると、

「遅刻やクレームを出す方が悪いんだ。他の会社でも罰金制度なんていくらでもあるだろ?バイトなんかいい加減な仕事しかしないんだから」

 と吐き捨てるように言った。

「いくら何でも金額が多すぎじゃないですか?バイトが全員辞めちゃいますよ」

 どんなに説得しても、松岡は「辞めたい奴は辞めればいい」と気にも留めない様子だ。困った竹山は、社会保険労務士である中学時代の友人に相談することにした。

ペナルティーには
法律上の規制がある

 会社で起こっている遅刻やクレームの罰金について相談したところ、友人は労働基準法に定める減給制裁のルールや損害賠償予定額の禁止に反するから、認められないと言う。

 具体的には、例えば、30分の遅刻をして30分ぶんの賃金を控除するのは、減給制裁ではない(ノーワークノーペイの原則)。しかし、遅刻した30分を超えた分を減給する場合は、「制裁」となってしまう。その悪用を防ぐため、労働基準法でルールが定められているのである。制裁が1回の場合、最大で平均賃金の1日分の半額まで。複数の制裁がある場合は、1回の賃金支給時における賃金総額の10分の1までしか認められないことになっている(労働基準法第91条)。

 本件にあてはめると松岡が設定した「遅刻1回に付き1万円」は、わずか1分の遅刻でも1万円の減給があり、1日1万円程度のアルバイトの場合、明らかに法律で決められた上限を超えている。クレームについては1回2万円で、現場の人数で案分しているが、これも労働基準法に違反(*)している。

 竹山は友人のアドバイスを根拠に、「労働基準法に違反しているから罰金は止めるべきだ」と進言したが、松岡は「法律なんて関係ない!」と意に介さなかった。

(*)労働基準法第16条では、違約金を定めたり、損害賠償額を予定したりする労働契約を禁じている。