圧倒的なスピード感で
日本的体質を打ち破る

――今回シンギュラリティ大学のジャパンサミットを東京で開催しようと思った一番の理由を教えてください。

パトリック・ニュウエル(Patrick Newell)/シンギュラリティ大学ジャパンサミット代表。教育活動家として、20年以上に渡って、世界各国の学習環境の変革、向上に取り組む。1997年に東京インターナショナルスクールを創設、現在45以上の国から370人の生徒が通う。2009年にカリフォルニア州で行われている講演イベント「TED」を東京に誘致、「TEDxTokyo」としてトッド・ポーター氏とともに立ち上げた。児童養護施設の子どもたちを支援する「Living Dreams」、21世紀にふさわしい教育法を開発する「21 Foundation」など、学びに関する活動に精力的に取り組む。企業に対するクリエイティブ・コンサルタントとしても活動している。

パトリック・ニュウエル氏(以下、パトリック) ひと言で言うなら、「目覚めよ、ニッポン!」という思いです(笑)。私は2016年7月にシリコンバレーにあるシンギュラリティ大学の本部で6日間のエグゼクティブプログラムに参加したのですが、そこでテクノロジーが持つ大いなる可能性に触れ、環境問題、高齢化問題など、ウィキッドプロブレムといわれる地球規模の厄介な問題が、テクノロジーによって根こそぎ解決される未来を見ることができました。

 ところが、帰国後に日本のリーダーたちと話しているうちに、エクスポネンシャルテクノロジーの多くの分野で日本企業の取り組みがいかに遅れているかを知って、とてもショックを受けました。精巧な技術やユニークなアイデアがあり、優秀な技術者や研究者もたくさんいる。なのに、なぜこんなにも遅れているのか。その問いがきっかけと言えるでしょう。

――その問いがシンギュラリティ大学にどうつながったのでしょうか。

パトリック これはTEDxTokyoでも感じていたことですが、一番の問題は企業や学校といった集団を成立させる力が強過ぎるということです。いわゆる縦割り体質のせいで、プロジェクトの実行までに時間がかかり過ぎる。

 日本の人たちは完璧を求め過ぎると思います。やる前にさまざまなリスクを考え過ぎて、関係者の確認や調整に時間がかかってしまう。もちろんそうした仕事の進め方が日本の精密な製品やきめ細かいサービスを生んだ土壌であることは否定しません。ただし、エクスポネンシャルテクノロジーの世界では、まずはアクション、そして改善していくことです。プロトタイプを作り、要求にフィットさせるサイクルを何度も回しながら、問題を解決し全体のスピードを上げていく。そうしたプロセスが多くの人々の関心を集め、解決のための知恵が集まってきます。

 こうしたシンギュラリティ大学のエクスポネンシャルテクノロジーを活用した課題解決のスピード感や同じような思いを持つ人々が集まってくる仕組みに、日本でも共感の輪が広がっていけば、大きなムーブメントになり、世界規模の課題解決に大きな貢献を果たせると思っています。