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アマゾンでいくら売れても
顧客情報は入ってこない
――BtoC企業が悩むマーケティングの課題

末岡洋子
【第166回】 2018年1月17日
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顧客とつながることができない原因は
ITではなく、社内政治

 伝統的な小売がECへの取り組みを変化させつつあるのもこのところの傾向だ。これまでの小売は、オンラインでも販売していたとしても、店舗優先のために在庫切れがよく生じていた。また小売のスタッフがオンラインに反発するケースも少なくなかった。

 ドイツの人気サッカーチームBayern Munchen(バイエルン・ミュンヘン)で選手のユニフォームやグッズを販売する部門も、同じような問題を抱えていた。そこで同社はSAP Hybrisを利用してオンラインストアを一新する際に、Web限定商品を店舗でも活用することに決めた。具体的にはWeb限定商品の写真と商品情報を店舗でも紹介し、消費者がオンラインで注文・購入すると、その売り上げはエリアの店舗に計上されることにしたのだ。これにより、店舗側の反対はなくなり、消費者のロイヤリティも改善した。もちろんデジタルで直接ファンとつながることは今後さらなるメリットを生むことだろう。同じような取り組みは、フィギアや玩具で知られるグッドスマイルカンパニーも展開しているとのことだ。

 別の試みもある。SAP Hybrisのある顧客企業は、在庫問題に目を付けた。そして、店が閉まる夜8時までは店舗に在庫をおき、それが過ぎると店舗のオーナーが在庫の何割をオンラインストアに回すかを決定、それがオンラインストアの在庫に切り替わり、次の日の朝になると店舗に戻るという仕組みを導入した。あくまでも論理的な在庫の移動であって実際にものが動いているわけではなく、売れるとそのエリアの成績となる。結果として、オンラインストアには在庫がないというクレームを減らし、全体の売り上げに良い影響を与えているという。

 これらの成功例は発想の転換が後押ししているが、SAP Hybrisは全社で顧客のデジタルトランスフォーメーションに利用するデザインシンキングを用いている。SAPジャパンでSAP Hybirsソリューション事業本部ソリューションエンジニアリングディレクターを務める阿部匠氏は、「わざわざ難しくする必要はない。自社のお客様に感情移入して、何を望んでいるのか、それを実現する阻害要因は…と考えれば解決の糸口が見えてくる」という。疎外要因になっているのは技術ではなく、社内の政治的なものが多いという。それを打破するにはどうしたら良いかが多くの顧客のテーマになっていると阿部氏は言う。

 高山氏は付け加えながら、「危機感を持っているところも出て来ている。ヘルスケア、旅行業界などで海外の進んだ事例が出て来ており、どうやって一歩踏み出すかをデザインシンキングで支援できる」と言う。

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末岡洋子

すえおか・ようこ/フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている。

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