多くのキュレーションサイトが閉鎖する発端となったDeNAのWELQ騒動。信憑性の薄い記事を粗製乱造してPVを稼ぐ手法が問題視されたわけだが、良いコンテンツを制作するには必然的にコストがかかるもの。ネット記事を手掛ける企業が生き残るためには何が必要なのか。(清談社 松原麻依)
インターネットには自浄作用がある
粗製乱造の記事が淘汰される理由
2016年末から今年にかけて世間を騒がせた「WELQ騒動」。医療系情報サイトを謳い、信憑性が求められる分野に特化した媒体にもかかわらず、科学的根拠に乏しい記事が大量に公開されていたことが問題視された。
キュレーションサイトの体をとっていた同サイトの記事は、他サイトからの情報をリライトするのみで、取材をしたり専門家の監修を受けるといった労力はほとんどかけてこなかったという。また、記事の多くは格安の報酬で雇われた外部のライターが作成していたものだ。
入念なSEO対策のもと、多くのユーザーが関心を持ちやすいテーマやキーワードを盛り込んだ低コストの記事を「粗製乱造」し、プラットフォーム全体のPVを上げる。すると広告収入が増える。非常に分かりやすいビジネスモデルだ。同じような構造のキュレーションメディアはWELQだけではないだろう。
スマートフォンで少し検索しただけでも、似たようなテーマの記事がいくらでも出てくる世の中だ。その中からユーザーに自社のコンテンツを選択してもらうためにはどうしたらいいか。倫理観を度外視して利益だけを追求するのであれば、WELQ的な手法にたどりつくというのは想像に難くない。
しかし、『顧客を観よ-金融デジタルマーケティングの新標準』の著者で、多くのウェブ媒体でコンサルティングを手がけてきた株式会社ビービットの宮坂祐氏はネットの『自浄作用』について言及する。
「インターネットには低品質なサイトも存在しますし、それに影響を受ける人も一定数いることは確かです。『ユーザーにとっての価値』を無視し、PVのみを念頭においた記事を量産することで、一時的に利益を得ることはできるかもしれません。しかし、ある程度メディアの規模が大きくなると、信憑性の薄い情報やあまりに倫理観が欠如した内容のコンテンツは、読み手から信用を失い退場させられてしまいます。こうした“自浄作用”がネットにはあるのです」(宮坂氏、以下同)
多くの人の監視にさらされているインターネット上では、あまりにアコギなことをすると、ユーザーから告発されることになる。WELQ騒動の場合も、Twitter上で問題を指摘する声が相次いだことが発端だった。
だが、コンテンツの質を上げることがメディア存続の条件だとすれば、一定のクオリティを担保するような制作者が必要となる。時には専門家の監修を受ける必要もあるだろう。記事1本の制作にかかる時間も増える。要はコストがかかるのだ。