企業向けのマーケティングアプリケーション大手である米国企業マルケト。そのCEOに昨年就任したスティーブ・ルーカス氏が来日し、マルケトの日本市場への取り組みと、今後のデジタルマーケティングの方向性を語った。

「エンゲージメント」は気持ちの問題ではない 企業の業績を伸ばす決定的な指標だスティーブ・ルーカス(Steve Lucas)
マルケトCEO(最高経営責任者)

コロラド大学で経営学士号を取得後、BusinessObjectsでの上級幹部職や、Salesforce.comでプラットフォームマーケティング担当シニアバイスプレジデントを務め、同社のクラウドベースのエンタープライズアプリケーション開発の展開を統括。その後SAPに移り、データベース&ミドルウェア事業部門担当グローバルエグゼクティブバイスプレジデント兼ジェネラルマネージャー、ビジネスアナリティクス部門担当グローバルジェネラルマネージャーを歴任。直近ではプラットフォームソリューション部門担当プレジデントとして、部門を数十億ドル規模で成長させ、さまざまな技術市場への展開を主導。2016年よりマルケトに着任して現職

――CEOに就任して1年とのことですが、この1年、どのような課題を持って取り組んできたのでしょうか。

スティーブ・ルーカスCEO(以下・略) まず、マルケトというツールを通じて、マーケターと営業部門の連携を強くして業績向上に役に立てるということを伝えてきました。企業と顧客の関係性が大きく変わるなかで、企業のマーケティングは営業の見込み客を作るだけの存在ではなくなっています。

 同時に、マーケティング技術の領域をよりシンプルにしたいと考えています。私は、顧客企業のCMO(最高マーケティング責任者)の主要なツールであるマーケティングテクノロジーが複雑すぎる、と常日頃思っています。マルケトが先導して、そこをわかりやすくしてきたい。現在マーケティングに関して非常に多くの技術があり、それらを用いた数千に及ぶ製品やサービスが存在していますが、CMOから見ると、いったい何を使ったらいいのかわからない。それを改善することが必要だと思いました。

 これらの実現のために、まずは顧客に対して1つのマーティングプラットフォームを提供し、その上で動く使いやすいマーケティング機能の提供、そして顧客に約束していた新技術の導入を進めてきました。アカウント・ベースド・マーケティング(ABM)。そして人工知能(AI)などです。それによって、収益アップを顧客に提供していきます。

 経営としては、強い業界、強い地域をさらに強化することが私のミッションでもあります。マルケトにとって最大の市場は米国ですが、それに次ぐ2位が日本です。日本は単独でEMEA(欧州・中東・アフリカ)市場の合計よりも大きな市場となっています。すでに成功している市場で、我々が今後もCMOに対して彼らが望んでいるサービスを提供し、周辺に拡大していくことが、マルケトの成長にとって非常に重要になります。

 今回マルケト日本法人の福田康隆社長は、日本を含むアジア太平洋地域の統括責任者に昇格し、日本の成功モデルをアジアに展開していく体制を強化しました。日本の成功は他の地域のお手本となっています。