このため、ギリシャ政府に大胆な歳出削減(=ギリシャ国民にとっては大幅な生活水準の下落)を求めつつ、EUとして金融支援を行っている。しかしながら、放漫財政の国家をなぜ規律を守っている他の国家が支援しなければならないのか、という一種のモラルハザードもあって、これまでの支援は中途半端なものに止まる一方、既に一度民間債務の削減(借金の棒引き)が決定されていることから、債務返済についての市場の信頼が容易には得られず、危機が繰り返され、ついには、スペインやイタリアという大国にまで危機が波及する事態となっている。

(3)大胆な支援の前提としての財政規律厳格化要求

 そこで、ユーロ圏全体について、債券が紙くずにならないという市場の信頼を一気に回復するためには、大胆な支援策(キャメロン首相の言う「巨大なバズーカ砲」)が求められている。

 しかし、支援国、特に、能力的にその主役を担うことが期待されているドイツは、①債権者に大きな損害を与えた債務削減が再発しないという安心感を与えて、市場の中長期的な信頼を回復させなければならず、また、②当面の対策としての金融支援のため、ギリシャなどの放漫財政のツケを自国の納税者に負担してもらう上で、それが底なしになるかもしれないというのでは世論の納得が得られないとして、まずは財政規律を厳格化し、赤字の垂れ流しを再発させないという保証を得ることが先決だという立場から、財政統合への一歩とされる今回の合意を追求したと見られている。

(4)財政統合なき通貨統合の問題が顕在化

 財政統合というのは、通貨と政策金利を統一する通貨統合に止まらず、税制や歳出のあり方を含めた経済財政政策全般の統合を言う。ユーロ圏は、本来、通貨統合に当たり、各国経済状況の収斂を確保すべきであったが、これを厳格には実施してこず、また不均衡是正のための財政調整の実効的な仕組みも設けてこなかった。

 このため通貨統合後、ユーロ圏諸国の間で、財政収支や労働生産性、競争力の点においてばらつきがむしろ拡大した一方、通貨と金利が統一されていることから、不均衡是正の力が働きにくいという構造的問題があり、これが2008年来の世界金融危機の中で一気に顕在化したわけである。