銀座線で瞬間消灯が見られなくなってから、既に20年以上が経つ。この問題を解決した01系も老朽化したことから、2012年には新型電車の1000系がデビューした。走行装置や車内設備は現在の最新技術を採用。もちろん車内灯が消えることもない。その一方、車体の外装は「日本最古の地下鉄」という銀座線の歴史を考慮し、かつての旧型電車を模したレトロ調のデザインでまとめられた。こうして01系は1000系に順次置き換えられ、今年3月までに全て引退している。

外装のみレトロ調のデザインを採用した1000系の従来車。ホームドアの整備計画に伴う追加発注が特別仕様車導入のきっかけになった

 1000系は当初、01系と同じ228両(6両編成38本)が製造されるはずだった。老朽化した01系の更新が目的の新型車両だから、当然といえば当然だ。しかし、導入が進む過程で銀座線の各駅にホームドアを設置することになり、当初の計画より車両を増やさなければならなくなった。

 ホームドアは転落事故の防止に大きな効果がある一方、ドアの開閉操作などに時間がかかり、駅での停車時間も長くなる。当然、列車の所要時間も長くなり、1編成で運転できる列車の本数が減ってしまう。そこで東京メトロは1000系を12両(6両編成2本)追加発注し、運転できる列車の本数を維持することにした。

旧型電車と同じ消灯は困難
センサー駆使して疑似消灯

特別仕様車はサードレールの「途切れ」をセンサーで検知して意図的に天井の車内灯を消し、壁の予備灯を点灯する

 ここで出てきたのが、特別仕様車の導入だ。追加発注するなら違う車両にしたい――そんな考えが東京メトロ社内で浮上。銀座線が開業90周年を迎えることもあり、1000系の従来車以上にレトロ感を強く打ち出すことにした。走行装置など基本的な仕様は1000系の従来車と同じだが、車体は外装だけでなく内装も90年前の開業時の雰囲気を演出。木目調の壁と真ちゅう色の手すりでレトロ感を演出し、座席の色も開業時の車両と同じ緑色にした。

 また、特別仕様車の仕様が検討される過程で「そういえば、昔の銀座線は車内灯が消えて予備灯が点灯していたね」という話も持ち上がり、実際に予備灯を設置することにした。地下鉄博物館(東京都江戸川区)で保存されている旧型電車の予備灯を3Dスキャナーで図面化し、同じ形状のものを製作したという。

 ただし、実際に車内灯が消灯する原理は、旧型電車とは大きく異なる。

 具体的には、先頭車の集電靴にセンサーを設置。このセンサーがサードレールの「途切れ」を検知すると、編成中の6両各車がサードレールの「途切れ」に入る時刻を走行速度から算出し、その時刻にあわせて後方各車の車内灯が自動的に消えるようにした。逆に各車の予備灯は車内灯の消灯にあわせて自動的に点灯するようにしている。