忘れ去られたギリシャ債務危機
世界がいま注視すべきリスクとは?
2010年、15年に世界の金融市場に激震を起こしたギリシャ債務問題。当時、メディアでは「ギリシャショック」という言葉が連日のように繰り返され、日本の市場関係者やビジネスパーソンも大きな不安に襲われた。
ところが、あれだけ騒がれたにもかかわらず、ギリシャ危機の後日談はめっきり語られなくなった。「喉元過ぎれば熱さを忘れる」ではないが、ギリシャが抱える構造問題は最悪期を脱したからといって、決して目を離していいものではない。世界にとって、長期的に動向を注視すべき問題だ。いったいギリシャは今、どのような状況になっているのか。現状とそこにある課題を改めて分析しよう。
統計を見る限り、ギリシャの景気は非常にスローなテンポだが持ち直しており、雇用情勢も最悪期よりは改善している。金融市場は落ち着いており、政府は昨年7月に3年ぶりとなる起債を行い、30億ユーロの5年物国債を発行した。金利も低下しており、12月初旬には10年物国債流通利回りが8年ぶりに5%を下回った。今年も市況次第ではあるが、複数回の起債が予定されている。
筆者は昨年10月、約2年半ぶりにアテネを訪問する機会を得た。実際に街中を見て回っても、前回訪問時(15年5月)よりも消費や建築は回っているような印象を受けた。また現地の銀行のアナリストやシンクタンクのエコノミストらにヒアリングを行い、ギリシャ経済に対する評価を聞いたが、どの有識者も「ギリシャ経済は最悪期を脱した」という見解を示していた。
ただ同時に強調されたのが、今年8月にも終了が予定されている欧州連合(EU)からの第三次金融支援以降も、EUや国際通貨基金(IMF)から何らかのサポートが得られない限り、ギリシャの財政は再び破綻する恐れがあるということだった。現在実施されている第三次金融支援は、15年8月の合意によるものであり、期間3年、最大860億ユーロというパッケージに基づいている。
これまでギリシャの債務問題は、最終的には何らかの合意に達するものの、それまでのプロセスは一筋縄ではいかず、ギリシャだけではなく欧州、そして世界の金融市場を混乱させてきた。第三次金融支援の終了を受けて、そうした状況が今年半ばにも再び生じることへの懸念が強まっているのである。