やりがいのある仕事をしている人たちは、自分の好きなこと、やりたいことを追求してその仕事に就いたのだろうか?アメリカやカナダでのインタビューや科学者たちの調査研究から、実際はまったく違うことがわかったという。これまでの常識を覆すキャリア論『今いる場所で突き抜けろ!』から抜粋・要約して紹介する。

自分が何を心から好きになるかなど、
前もってわかるものではない

  2001年、大学を卒業したばかりの友人4人グループが、アメリカ中を旅して、「やりがいのあることを生活の第一に置いている」人たちに、インタビューをして回った。4人は、「自分たちも何かやりがいのあることをキャリアにしたい」と、アドバイスを求めたのだ。

 その旅をドキュメンタリーとして撮影したところ、PBS(公共放送サービス)のシリーズへと発展した。やがて4人は「ロードトリップ・ネーション」というNPOを立ち上げ、他の若者たちを支援して自分たちのような旅をしてもらおうとした。「ロードトリップ・ネーション」のよい点は、プロジェクト用に行ったインタビューの動画アーカイブを保管していることだ。

 どのようにすれば、結果的に魅力的なキャリアが得られるのか。

 あるインタビューでは、公共ラジオ局のパーソナリティを務めるアイラ・グラスに、大学生3人が、どうすれば「やりたいことが見つかるのか」「得意なことを見つけられるのか」について聞いている。

「映画の中でなら、君たちはただ夢に向かって突き進めばよい、というところだが、私はそうは思わないよ。段階を踏んでいかないとね」

 グラスは、何事も上達するには時間が必要だと強調し、彼自身長年かかってラジオ番組にかかわるスキルを磨き、そこから興味のあった試みに取り組んだと語る。

大切なのは、仕事をとことんまでやること、スキルが身につくまでがんばることだ。そこが一番きついんだけどね」とグラスは言う。

 インタビューしている学生たちは、その答えに唖然とした表情だ。彼らが期待していたのは、「仕事はきついのが当たり前だからがんばれ」ではなく、何かもっとモチベーションを高めるような言葉だった。

 その表情に気づいたグラスはこう続ける。「君たちの問題は、行動する前に理屈だけですべてを判断しようとすることだ。それが間違いのもとなのだよ」

 自分が何を心から好きになるかなど、前もってわかるものではない。