結論その1:「やりたいこと」など、めったにない

 2002年、カナダの心理学者ロバート・J・ヴァレランド率いる研究チームが、カナダの大学生539人に詳細なアンケートを実施した。

 このアンケートで引き出そうとしたのは、「学生には、やりたいことがあるのか」、「あるとしたら、それは何か」という2つの重要な質問の答えであった。

「“好き”を仕事にしよう!」の中心になるのは、誰にでもあらかじめやりたいことがあって、それが見つかるのを待っている、という前提だ。

 その前提を調査した結果、84%が「やりたいことがある」と回答した。

 学生たちがやりたい、と答えたトップ5はこうだ。
1 ダンス
2 ホッケー(カナダではホッケーが盛んであることをお忘れなく)
3 スキー
4 読書
5 水泳

 確かに学生たちにとっては大切なものばかりだが、これらの「やりたいこと」は職業の選択には、あまり関係がない。

 実際、やりたいことの調査結果の中で、仕事や教育に少しでも関わりのあるものは、4%にも満たなかった。残りの96%はスポーツや芸術のような趣味的な関心事を挙げていた。

「“好き”を仕事にしよう!」の支持者には大きな痛手だが、落ち着いてこの結果を受け入れてみよう。追い求めるべき夢もないのに、どうやって「やりたいこと」を追い求められるというのか。少なくとも、このカナダの学生たちの大半は、職業の選択に関しては別の戦略が必要となるだろう。