金正日総書記の死去により、今後の体制に国際的な関心が集まる北朝鮮。そんな突然のトップ交代に揺れる北朝鮮と緊密な関係にある中国でも、今年に胡錦濤体制から習近平体制へ移行する。日本の外交政策上、非常に重要な国である中国や北朝鮮のトップ交代は、国内政治にどのような影響を及ぼすのか。後編では不確実性高まる東アジア情勢を中心に、東京大学法学部政治学研究科の藤原帰一教授に話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集長 原英次郎、林恭子)

北朝鮮情勢の行方

――北朝鮮・金正日総書記が亡くなった。後継者である三男・金正恩氏が最高指導者に就任することによって、北朝鮮国内、ひいては対中国や韓国、日本との関係に今後、どのような影響を与えると予想されますか。

ふじわら・きいち/東京大学法学部法学政治学研究科教授。1956年生まれ。専門は国際政治、東南アジア政治。東京大学法学部卒業後、同大学院単位取得中退。その間に、フルブライト奨学生として、米国イェール大学大学院に留学。東京大学社会科学研究所助教授などを経て、99年より現職。著書に『平和のリアリズム』(岩波書店、2005年石橋湛山賞受賞)など。
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 北朝鮮については、2つの危機が想定される。第一は、軍事攻撃の可能性だ。2010年には哨戒艇を沈没させ、延坪(ヨンビョン)島を攻撃するという行動に訴え、現在もミサイル実験や核実験、さらに限定的な韓国への攻撃の可能性は残っている。ただ、大規模な戦闘に訴えた場合は中国が軍事的に支援する可能性が乏しく、西側諸国に対して勝利を収めることはありえない。憂慮されるのは限定攻撃の可能性と、核保有の既成事実化の2点だ。

 第二の危機は体制崩壊だ。北朝鮮の指導部は金正恩への権力委譲をできるかぎり平穏に進めようと試みるだろうが、経済不安が恒常化し、新たな飢餓さえ予測されている状況において、政治経験を持たない金正恩によって体勢を支えることができるのか、疑問が残る。

 軍事攻撃と体制崩壊のどちらをより恐れるのかによって、各国への影響は異なる。中国が恐れているのは何よりも体制崩壊だ。韓国は体制崩壊も懸念材料だが、軍事攻撃への警戒が強い。日本では体制崩壊よりも軍事攻撃に懸念が集中していると言ってよい。だが結果としては、平穏な権力移行の方が不安定の拡大よりも望ましいとする点において、どちらの態度にも大きな違いがあるとはいえない。

習近平体制によって懸念される
「軍の勢力拡大」と「中国の孤立」

――2012年秋、中国では次期リーダーとして、習近平・国家副主席が選出される見通しです。習近平氏が国家主席となった場合、日中関係への影響は?