「核兵器を持っているのは公然の秘密」核保有を公式に認めない国の名前写真はイメージです Photo:PIXTA

「核なき世界は、平和で安全な世界!」と叫ぶ人がいる。その考えは、本当に正しいのだろうか。互いに武器を持ったまま先に手放すのはどちらか、核をめぐる国際関係は、そんな腹の探り合いによって複雑に絡み合っている。世界平和への足並みが揃う日はいつ訪れるのか。核問題の実情を丁寧に見つめ直す。※本稿は、千々和泰明『世界の力関係がわかる本――帝国・大戦・核抑止』(筑摩書房)の一部を抜粋・編集したものです。

北朝鮮の核開発は
なぜ許されないのか

 核抑止(編集部注/核兵器による報復の脅威で敵の攻撃を思いとどまらせる安全保障戦略)と同時に、世界では核兵器保有国を増やさない、核不拡散のための取り組みも進められてきました。核兵器が拡散すれば、それだけ核のボタンに手が触れる機会も増えて危険です。

 そこで1968年に、核不拡散条約(NPT)が結ばれました。核不拡散条約では、この条約が結ばれた時点で核兵器を持っていたアメリカ、ソ連、イギリス、フランス、中国にのみ核の保有を認め、それ以外の国が核を持つことを禁止しました。ちなみに核不拡散条約で核兵器の保有を認められた5ヵ国は、国連安保理常任理事国のメンバーと同じです。

 これら5ヵ国以外の国、たとえば北朝鮮が核兵器を持つのは核不拡散条約違反ですので、北朝鮮は国連安保理決議にもとづく経済制裁を課されています。中東のイランも核開発を進めており、こちらも国連安保理決議による経済制裁の対象となっています。仮に日本が非核三原則を捨てて核兵器を保有したとすると、やはり核不拡散条約違反となり、国連から制裁を受けるでしょう。

 アメリカやソ連などの5ヵ国は核兵器を保有してもよくてそれ以外の国はダメ、というのは、たしかに不公平に感じられますよね。