いつまでも抱き合うお二人。
これまで夫婦で歩んできた長い道のりを思い出されているようでした。
30年越しの念願のウェディング。
お父さまは、何度も何度も嬉しそうにお母さまのドレス姿を眺めていらっしゃいました。
そして、新郎はそんなご両親に語りかけました。
「お父さんお母さん。二人には感謝の気持ちしかありません。たくさんの愛をありがとうございました。そして30年目の結婚おめでとう。これからもずっと仲良く添い遂げていってください」
そして、新郎が牧師役になり、その場でご両親の結婚式を執り行いました。
「お父さん。お母さんを生涯愛し抜くことを誓いますか?」
お父さまは涙を拭いながら頷かれました。
「はい、誓います」
その様子を会場の隅で涙を流しながらご覧になっている方がいらっしゃいました。
その方は新郎のお祖母さま。
お母さまのお母さまです。
まさかこの歳になって娘の花嫁姿を見ることができるなんて、と感極まったご様子でした。
「こんなに幸せなことはない」
お祖母さまは小さな声でそう呟かれました。