さて翌日。帰宅途中の電車の中でK子さんは猛烈な吐き気に襲われた。停車した駅で降りるとトイレにダッシュ。間一髪で通路や床を汚さずに済んだが、続いて下痢も発症し、結局30分以上トイレから出ることができなかった。

「ノロウイルスかもしれませんね、流行していますから」

 駅近のクリニックを受診すると、医師はさらっと言った。

「あのぅ、『お腹の風邪』ではないんですか。昨日の夕方、娘が小児科でそう言われたんですけど」

 K子さんは納得がいかない。ノロウイルスという病名はよく、冬場のニュースで耳にする。集団感染を起こして老人ホームや飲食店が大変なことになる「あの病気」。これまで一度もなったことがないのに、まさか自分がなるなんて。

「そうですね、『お腹の風邪』ともいいますよ。『急性胃腸炎』とか『嘔吐下痢症』という呼び方をすることもあります。これらは全部同じです。ウイルスや細菌が消化管に入って炎症を起こし、胃や腸の動きが悪くなるために嘔吐したり下痢したりします。ノロウイルスかどうかは、検査しないとわからないんですけどね。迅速診断は3歳未満か65歳以上の方なら、保険で行うことができるんですが、それ以外の年齢では自費になってしまいます。

 まあ、原因が特定できても、脱水状態にならないよう水分補給しながら、ウイルスが身体からいなくなるのを待つほかないのは変わりませんからね。あとは、ほかのご家族に感染させないよう気をつけて、お大事にしてください」