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福島県二本松市の新築マンションに、放射性物質で汚染されたコンクリート骨材(砕石)が使われたとされる問題に、首都圏のマンション分譲会社もいらだっている。
判明した出荷先リストを見ても、また輸送コストもかかることから砕石地から遠く離れた首都圏のマンション建設で汚染骨材が使用された可能性はそうとう低い。
しかし、東日本大震災以降に建設されたマンションでは不安を感じている住民も少なくないため、分譲会社は対応に追われている。
たとえば三菱地所は東日本大震災以降に建設されたすべてのマンションに関して、施工業者へ確認作業を依頼した。結果が出次第、住民へアナウンスして、あらためて安心してもらうことになるという。マンション施工最大手の長谷工コーポレーションは報道のあった翌日に社内調査を行い、福島県産のコンクリート骨材は使用していないことを確認して周知している。
建設ずみのマンションの安全性が問題になった件では、2005年に発覚した「耐震偽装問題」が記憶に新しい。当時は「うちは大丈夫か」と住民から売り主やゼネコンに問い合わせが殺到した。
今回は震災以降に建設された物件が対象となるため、調査件数は比較にならないほど少ない。震災以降、大手各社は資材の放射線量について第三者機関でチェックを受けているため、首都圏のマンション分譲各社は大きな混乱や住民対応に追われることはないと静観している。
ただ、今回の問題では放射性物質汚染に対する国や業者の認識不足が露呈した。住宅購入時には停電や液状化などに加え、「資材汚染」という新たなリスクがあることを印象づけてしまった。
新たな汚染判明や補償の難航など、問題が長期化すると足元では震災不況から回復しつつあるマンション販売動向に水を差しかねない。「モデルルームでは耐震性能の説明に時間を割くようになったが、今後は資材の安全性の説明もていねいにするしかない」とマンション分譲各社は口を揃える。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木 豪)