黒田氏が再任されないとすれば
物価目標の未達や高齢が問題か

 報道によれば、安倍政権のブレーンで内閣官房参与を務める浜田宏一エール大学名誉教授が黒田総裁続投を支持しているように、黒田総裁は安倍首相の周辺からの信頼も厚いと見られ、再任が有力視されています。

 ただし、どの世界でも人事はわからないものであり、次の日銀総裁に誰が任命されるか決定するまでは、市場の注目が集まります。市場は、好景気や株高を演出した黒田総裁の続投をある程度織り込んでいるだけに、黒田総裁が交代となると、市場への悪影響が懸念されるからです。

 黒田総裁が任命されないケースとしては、足元の物価が目標の2%に大きく届いていないことから、人心一新が必要との声が勝ることが考えられます。マネーを大量供給し、インフレ期待を醸成してデフレから脱却しようとするリフレ派からは、より緩和に積極的な人物を望む意見もあるようです。また、現在73歳と高齢であることも理由になるかもしれません。

 では、もし総裁が交代するとなった場合、どんな候補者がいるのか見ていきましょう。

慣例では日銀組だがリフレ派や学者も
誰がなっても大きな混乱はなし

 先述のように、黒田総裁が交代する場合、後任候補として、中曽宏・日銀副総裁、雨宮正佳・日銀理事、本田悦郎・駐スイス大使、伊藤隆敏・米コロンビア大学大学院教授などの名前が挙がっています。それぞれの特徴を簡単にまとめてみました。

 中曽宏・現日銀副総裁は、日銀出身の金融市場の専門家であることから、次期総裁の有力な候補者と目されています。

 雨宮正佳・現日銀理事も日銀出身の候補です。企画担当が長く、現在の金融緩和政策の枠組みを主導してきました。

 本田悦郎・駐スイス大使は、安倍首相との付き合いが長く、アベノミクスのアドバイザーを務めてきたことから、候補に挙がっています。財務省出身で積極的なリフレ派とみられています。

 学者出身の候補者としては、伊藤隆敏・米コロンビア大学大学院教授が挙げられます。国内の経済学者や政治家に加え、世界的な経済学者とも交友があり、内外でも知名度が高い、インフレターゲットの主唱者です。

 ここで過去の日銀総裁人事を見ると、日銀総裁のポストは、原則として財務省(旧大蔵省)と日銀の「たすき掛け」人事が慣例でした。その順番からすると、黒田総裁(財務省出身)の後任は、日銀からの内部昇格(中曽副総裁、雨宮理事が候補)となる可能性があります。

 中曽副総裁、雨宮理事は、これまで黒田総裁と共同歩調をとってきたことから、次期総裁になった場合でも、大きな政策転換はないと見られます。現在の副総裁や理事の中から次期総裁が選ばれれば、政策の一貫性が保たれることから、市場では好ましいという評価になると思われ、市場は落ち着いた反応を示すと予想されます。

 一方、日銀出身以外の候補者が任命された場合でも、市場との対話を通じて、少なくともしばらくは現行の政策方針が維持されるという見方が広がれば、市場に大きな混乱はないと考えます。その場合は、金融緩和に対し、より積極的な候補が選ばれる可能性があり、混乱があっても一時的となる公算が大きいと思われます。つまり、誰が次期総裁になっても金融政策の方針が大きく変わることはなく、市場が大きく乱れることはないでしょう。