黒田東彦・日本銀行総裁は1月23日の記者会見において、米連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)と異なって、現時点で日銀は金融政策を変えるつもりはないことを強調した。
1月9日の超長期国債の買い入れオペの減額を見て、為替市場では「日銀が出口政策に向かうサインだ」とはやし立てる動きが見られた。債券市場や短期金融市場のトレーダーたちは「勘繰り過ぎ」と冷ややかだったが、総裁の今回の発言はそれに沿うものだった。
日銀がこの日に公表した「経済・物価情勢の展望」(いわゆる「展望レポート」)における政策委員の2017~19年度の実質GDP(国内総生産)とインフレ率の予想(中央値)は、前回(昨年10月)と全く同じだった。
FRBとECBが昨年12月に発表したそれぞれの実質GDP予想は、世界経済の好調さを背景に顕著に上方修正された。両行に比べると日銀は慎重といえる(もともと民間より強気の予想だったこともあるのだが)。今回の「展望レポート」は全体として、出口政策はまだ遠いことを示唆していた。
1月18日掲載の当コラムでも触れたように、次期日銀総裁の人選やFRBの利上げ継続で日米金利差が開いてくれば、日銀が長期金利誘導目標を年内に若干引き上げる可能性が出てくるだろう。
ただし、それは出口政策の開始を意味しない。超緩和策の長期継続を前提として、その副作用(地域金融機関の収益悪化による金融仲介機能の低下)が緩和効果を減殺することを避けるための微調整と位置付けられると思われる。とはいえ、今はまだ4月以降の総裁が誰になるかも決まっていない。