「勝ちたい!」という欲求を手放せば、すべてうまくいく!
では、実際にどうすれば扁桃体を刺激することなく目の前の行動に集中することができるのでしょうか?
繰り返しになりますが、扁桃体が興奮するのは未来(予期不安)や過去(トラウマ記憶)に意識が向かった時です。
ビジネスパーソンであれば、コンペのプレゼンなどで、「なんとしても勝ちたい!」と「結果(未来)」に意識が向かい、心臓がドキドキし始め、呼吸は乱れ、額や手の発汗量が増加している状態です。
逆にいえば、今行っている目の前の行動だけに集中できれば、理論上、扁桃体が興奮することはありません。
わかりやすい例でいえば、朝目覚めた瞬間の状態です。朝目覚めた瞬間というのは、起きている時の中で最も「今」に集中できている状態なのです。
そこから15秒、30秒も経てばいかがでしょうか?
昨日、上司に怒られたことや、プレー中にミスしたことなどが次々に思い出され、同時に今日これから大事なプレゼンや試合があることが浮かび上がり、目覚めた瞬間のニュートラルな状態から、急激にメンタルヘルスが悪化していくのがおわかりだと思います。
このように、意識が過去や未来に向かい出すと、人のメンタルは乱れ出すという性質を持っています。
ですので、非常に逆説的ではありますが、「勝ちたい!うまくやりたい!」と結果を強く望むより、いったんその勝利への執着を捨て去り、目の前の行動、プレーだけに集中した方が、扁桃体が興奮せず、心身共に最高の状態でプレーができるのです。
一方、まだまだ日本には、気合いや根性を重んじる風土がありますから、なかなか本番で「結果」を意識しないで力を抜くというのは難しい課題でもあります。
試合前によくコーチが選手に対して「気合いを入れていけ!」と声を掛ける場面が見受けられますが、ピリピリした環境の影響を受けやすく、脳の興奮が高ぶりやすい日本人は、すでに試合前には相当集中が高まっている状態なのです。
ですので、そこからさらに気合いを入れてしまうと、脳が過活動状態になり、集中し過ぎて、逆に周りが見えなくなってしまうのです。
ただし、安静時よりストレス時の方が、覚醒が下がるタイプの人は、逆にシャキッと集中するためにも「結果」を意識した方が、パフォーマンスが高まることが多い傾向にあります。
「目指すは金メダル!」と公言して自分自身にプレッシャーを与え、実際に獲得してしまうのがこうしたタイプの人たちなのです。