実際は、こうした企業の本源的価値を推定するにはもう少し複雑な推計が必要だ。将来の売り上げから利益率等の前提をおく必要があり、推定者によってその前提が違うので、確定的な数字になることはない。

 しかし、その企業の過去の実績、事業計画の確かさ、経営者の信頼度がある程度共有されると、前提の違いの差が著しくなることはなく、本源的価値という概念の有効性が損なわれることはない。

 また資本提供者に、株主だけでなく、銀行(融資)などの負債提供者がいる場合、本源的価値-負債=株主価値となるが、本稿では、簡単に説明するために、本源的価値=株主価値として議論する。

 図2は、負債のない本源的価値=株主価値の企業の市場株価が、本源的価値に収斂する様を概念的に示したものである。

◆図表2:本源的価値と市場株価

 これは何を示しているかというと、短期的には、対象企業の本源的価値につながるファンダメンタルが広く共有、理解されないまま、ケインズの言う美人投票効果や、対象企業の社内外の事象に対する過剰反応で、市場株価はほとんど常に本源的価値から乖離する。しかし時間と共に、それは本源的価値に近付くしかない、ということだ。

 対象企業の情報が売り手と買い手の間で最大限に共有されるM&A取引で、売買価格がその企業の本源的価値から著しく乖離することがあり得ないように、結局は本源的価値が価格(株価)の基準になる。