だから今回の逮捕を見て、「だから言わんこっちゃない」と思った。

 銀行員、新聞記者など会社の機密情報に触れる機会の多い職業の人間は、若手であろうと株取引は原則としては禁止されている。公務員も同じようにすべきだ。甘いんじゃないか!

儲け話を断った支店長

 それに関して私には強烈な思い出がある。若いころのことだ。当時は、取引先企業が上場すると、社長が保有株を関係者に譲渡してくれる「親引け株」と言う制度があった。当然、インサイダー取引なのだが、そんな規制も考えも無かった。親引け株、それは確実に儲かる株だった。誰もが欲しがった。

 ある時、私の取引先が上場することになって、私と支店長に社長がお礼にと、親引け株を持って来た。私は、嬉しくてわくわく。ところが支店長は「いりません。上場のお手伝いができたことを嬉しく思います。それで十分です」と、断ってしまった。私は、がっくり。なんで!という気持ちだ。

 取引先が帰った後、支店長は私から「銀行員は誘惑が多い。絶対に他の人から疑われるようなことをしてはいけない」と、厳しく叱られた。この支店長の叱責のお陰で、私はバブル時代を無事に過ごせたのだと思って、今でも感謝している。まさに、「李下に冠を正さず」を、身を以て教えてくれたのだ。

 さて逮捕されたエリート官僚は、妻の言いなりで株を買ったと言い訳をしたが、かつて厚生省次官が業者との不正な癒着で逮捕された時も、「おねだり妻」が有名になったことがあった。本人より、妻が業者に自宅の修繕をさせたりしていたのだ。

女の言うことに……

 男尊女卑だと受け止められたら拙(まずい)が、「史記」にも「児婦人の口は用うべからず」と言葉が出て来る。女、子どもの言うことに耳を貸すなと言う意味だ。

 これは漢の高祖劉邦の妻、呂后の言葉。この人、こわーい奥さんだが、高祖の死後、呂一族を次々と王位に取り立て、劉氏一族や重臣たちを排除し始めた。