「子曰はく、学んで時に之を習ふ。亦説(よろこ)ばしからずや。朋(とも)あり遠方より来る、亦楽しからずや。人知らず、而して慍(いか)らず、亦君子ならずや」(学而第一)
2014年が明けた。私もついに60歳になった。還暦だ。
還暦は、干支が一巡して、元に還ることの意味のようだ。だから赤いちゃんちゃんこを贈られる。赤は魔よけの色だ。
還暦になり、生まれ変わることができるなら、もう一度生き直して、数々の人生の分岐点で判断をやり直したい。結果が分かっている今なら、判断を間違えないで済むからだ。でもそれは不可能だ。
「無事」と悟り
ゴルフをやっていてつくづく思うのは、人生と同じだなってことだ。ティーショットなど、どんなショットを打つ場合もイメージは最高だ。高くきれいに延びる弾道でボールが飛んで行き、グリーンをとらえる。ところがいざ、打ってみると、地面をしたたかに打ち、黒い土が顔を出す。
「ああぁ」とため息が出る。「ひえっ」と悲鳴になることもある。力を入れ過ぎたなぁ。スタンスが悪かった。ウッドじゃなくてアイアンを持てば良かった……。何十となく後悔の気持ちが、一気に湧きあがる。しかし、もう遅い。打ち直すことはできず、とぼとぼとラフに向って歩くことになる。そしてまたその失敗を取り返そうとして、性懲りもなく失敗を繰り返し、傷を深めていく。止めりゃいいじゃないかと思うのだが、途中でゲームを降りることはできない。同行の仲間に迷惑をかけることになるし、何より自分が許せない。もっと上手くやれるはずだと信じているからだ。
こんな繰り返しで、私などはたいした希望もなく還暦を迎えてしまった。新しい年だと言っても、今さら気負うことはない。なんとか無事に今年も過ごせればいい。それだけだ。