バンクーバーでキム・ヨナ、
ソチで羽生に「金」をもたらしたコーチ

 ただ、そうした不安を取り除いてくれる心強い存在がいる。羽生を指導するブライアン・オーサーとトレーシー・ウィルソンというコーチだ。ふたりともカナダ出身の元フィギュア選手で、コーチ転向後は数多くの名選手を育てている。

 とくに頼りになるのはオーサーコーチだ。2010年のバンクーバー五輪では、浅田真央のライバルだったキム・ヨナ(韓国)のコーチを務めた。あの時の浅田とキム・ヨナの金メダル争いを覚えている人も多いだろう。トリプルアクセルという難易度の高いジャンプ(技術点)で勝負をかけた浅田に、大技を持たないキム・ヨナは技の完成度で対抗。結果はキム・ヨナの出来栄え評価(演技構成点)が上まわり金メダルを獲得した。この採点には日本のファンやメディアが疑問の声を上げたが、フィギュア関係者にとっては納得の結果だったらしい。

 その後、オーサーコーチは羽生を担当するようになったが、ソチ五輪の金メダル獲得にも手腕を発揮している。この時の羽生のライバルは演技構成点が高いパトリック・チャン(カナダ)だったが、羽生には4回転ジャンプを2種類入れる技術点で対抗することを指導。見事に金メダルにつなげた。

 審判の採点基準を分析し、選手のその時の調子や持ち味を見極め、剛には柔、柔には剛と相手を上まわる方法を考え、勝つ確率の高い指導をする。オーサーコーチは稀代の戦略家であり、チャンピオンメーカーといえるのだ。

羽生が今回ライバルに
勝つための戦略は?

 最近の2大会で女子と男子、ふたりの五輪王者を育てただけあって、リンクサイドで選手の演技を見守る姿も頼もしく見える。練習時、オーサーコーチがどのように選手に接しているかは分らないが、その視線は温かく、包容力が感じられる。羽生もオーサーコーチがついていれば、安心して演技に集中できるのではないだろうか。