また、フィギュアスケートを熟知しているオーサーコーチなら現在の羽生の課題といえるスタミナ面もしっかりと目配りしているはずだ。おそらく故障した11月9日から回復具合をチェックしつつ、五輪本番までに残された時間を逆算して緻密なトレーニング計画をつくり、16日のショートプログラム、17日のフリーには100%の状態にすることに集中してきたはずだ。

 勝つための戦略も用意しているだろう。最大のライバルといわれているのはネイサン・チェン(アメリカ)。5種類の4回転ジャンプを持つ18歳の伸び盛りの技術点で勝負する選手だ。それに対し羽生は今回はケガのことも考え、大技での勝負は避けるはずだ。基礎点は高いがケガの原因となった4回転ルッツは避け、4回転は負担がさほどかからないトーループやサルコーと3回転の連続ジャンプで補う。技の完成度や演技構成点で勝てると見ているはずだ。他のライバル、宇野昌磨(20)、ハビエル・フェルナンデス(26・スペイン)、金博洋(20・中国)も上まわることができると読んでいるに違いない。

フィギュアスケートの成績を
左右するコーチという存在

 スピードスケート女子1500mで銀メダルを獲得した高木美帆は、オランダ人のヨハン・デビッドコーチの指導によって実力を伸ばしたといわれる。どの競技も勝利の陰には名コーチの存在があるが、フィギュアスケートはとくにその傾向が強い。手腕のあるコーチをつけるかどうかが結果を左右するわけだ。

 これまでもプルシェンコらを育てたアレクセイ・ミーシン(ロシア)をはじめ、荒川静香、浅田真央らを指導したタチアナ・タラソワ(ロシア)、高橋大輔、荒川静香、安藤美姫らを担当したニコライ・モロゾフ(ロシア)、パトリック・チャンを指導したマリア・ズエワ(ロシア)、日本人では山田満知子(伊藤みどり、浅田真央など)、佐藤信夫(浅田真央)、最近では女子のメダル候補、メドヴェージェワとザギトワなどを指導しているエデリ・トゥトベリーゼといった名コーチがいるが、現在最も高い指導力を持つのはオーサーコーチといっていいだろう。

 そんな頼もしい人物を味方につけているのが羽生結弦。だから「クリーンに滑れば絶対勝てる」という強気のコメントができるのだろう。大ケガからの奇跡の復活金メダルを信じて、その演技を見守りたい。

(スポーツライター 相沢光一)