経営 × 人事評価

部下をやる気にさせる、対話による
「コーチ型マネジメント」の極意とは?

上條昌史
2018年3月1日
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コミュニケーションが成立していなければ、
会社は成り立たたない

 実際のコーチングでは、質問の繰り返しで考えるプロセスを共有したり、「どうしたらいいと思う?」という“問いかけ”で考えさせたり、「何のため?」「なぜそのやり方?」など新しい視点を投げかけたり、さまざまな工夫や方法がある。

 「いずれにしても、コーチングとは、人間関係を見なおしていく作業だと言えます。1対1で行われたコミュニケーションは、そこを起点に、波紋が広がるように周囲に波及します。上司と話をして前向きになった部下は、次にお客様に会ったときに、ポジティブな会話をするはず。それが最終的に、組織全体の生産性の向上につながるのです。私たちはこれを、システミック・コーチングと言っています」 

 ある工場では、改善活動にコーチングを導入して3ヵ月ほどで、ラインの不良率を0.6%から0.3%に引き下げることに成功したという。その改善は、毎週1回30分間、上司が部下の話を聞くという、コーチングの取り組みの中から生まれたものだった。

 いずれも、部下たち自らが自主的、能動的に現状分析や原因究明を行って提案した改善策だった。やっていることは、不具合が起こるラインの形状を変えたり、チェックリストを作成するなど、改善活動としては当たり前のことだが、コーチングを実行する以前は、その改善そのものが起こらなかったのである。

 また桜井氏が手がけた案件に、タイの工業団地にある日系部品メーカーがある。その日本人社長にエグゼクティブ・コーチングを行ったのだ。ゴールは「現地化」である。

 「当初、現地スタッフは社長の指示で動くのが当たり前で、社長がいなければ機能しない組織と化していました。社長の目標は、会社全体が能動的な組織になること。部下たちと対話すると、仕事の意味を全く理解していないことが判明したため、対話を重ねながら、指示を出すことを控え、大事な仕事を思い切って任せるようにしたのです」

 その社長の姿に影響され、マネージャーも部下にコーチングをするようになり、組織は1年で劇的に変わった。生産性がアップし、4年後の今は工場を拡大することが決まり、社長自身は“何もすることがない”まで成長、現地化が成功したのだ。
 
 桜井氏はこう断言する。「結局、組織でいちばん難しいのは“人”のマネジメントです。会社は社員にとって、家族よりも長い時間を過ごすところ。そこで各社員が最高のパフォーマンスを発揮できるコミュニケーションが成立していなければ、会社は成り立ちません。だからこそ今、対話を軸としたコーチ型マネジメントが必要とされているのです」

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