日本の電機各社が苦境に立たされている。ソニーはハワード・ストリンガー会長兼社長CEOが業績不振の責任を取って今年4月で経営の第一線を退くなど、巻き返しに必死だ。日本の電機各社に浮上のチャンスはあるのだろうか。国内外大手の証券会社でアナリストとして電機業界を20年間にわたって見続け、現在は、ファンドマネージャでもあるフィノウェイブインベストメンツ社長兼CIOの若林秀樹氏に見解を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集部 片田江康男)

端末ビジネスで勝負をするなら
大胆なサプライチェーンの見直しが必須

わかばやし・ひでき/1984年東京大学工学部、86年同大学院卒業。日米の大手証券会社で20年以上にわたり一貫して電機業界のアナリストとして活躍。著書に『日本の電機産業はこうやって蘇る』(洋泉社)など。
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――2012年3月期、シャープは純損益が2900億円の赤字、ソニーも純損益は2200億円の赤字となるなど苦境に立たされている。現状をどう見ているか。

 各社はまだ端末ビジネスに固執している。固執している以上、業績の浮上は難しいのではないだろうか。情報家電などの端末の価値はどんどん落ちている。価値はクラウドなどのネットワークやソフトウェア、コンテンツなどに移っている。

 もし、百歩譲って端末ビジネスで勝負をするのであれば、サプライチェーンの仕組みをゼロから考え、コスト競争力をつけなければならない。それこそ、今、各社がやらなければならないことだ。中国などで、山寨機(さんさいき)と呼ばれる偽造品が大量に生産されている。山寨機は超低コストで作られているわけだが、これらにも勝てるコスト競争力を生む仕組みを考えなくてはならない。