やっかいな問題が起こる可能性は身近にあふれている
東京大学地震研究所の発表では、「4年以内にマグニチュード7の地震が70パーセントの確率で起こる」という具体的な数字が出ています。多くの人はそこにリアリティを感じるかもしれません。
このように数字で示されることは珍しいものの、私たちの生活の中で、想定したくない問題が起こる可能性は、身近にもあふれているのではないでしょうか。
自分が病になる確率、交通事故に遭遇する確率、子どもが問題を起こす確率、結婚相手が浮気する確率、リストラされる確率、親の介護が必要となる確率――。数え上げたらきりがありません。
歩いていてビルからモノが落ちてきて命を失う、と言った滅多に起こりそうではないことを除いても、身の回りは、「やっかいな問題が起こる可能性」に囲まれています。それが私たちの生きる現実の世界です。
私たちは普段、こうした問題が起こることを考えずに生きています。そんなことはたぶん起こらないだろう、自分の身には降りかからないだろうと。逆にいつ何が起こるかわからないとすべての可能性を警戒しながら生きていくのも、大変な労力になります。
人生を板の上を歩くことに例えるならば、自分が乗っている板が本当は薄くて割れやすく、板の下に奈落が広がっていることを知ってしまうと、人間は恐怖に足がすくんで1歩も動けなくなってしまいます。しかし、板が分厚く、頑丈で安全なものだと信じてさえいれば、安心して前に進んで行けるのです。
問題があることを知らなければ、その問題は「ない」ことと同じになります。
一方で、東日本大震災を経験した以上、見たくない問題に囲まれて日々を生きていかなければならないということに、気づかされてしまったのではないでしょうか。