日本での中国に関する報道は、中国共産党の動向を不安視する一方、中国人訪日客による消費を歓迎する声も多く、中国や中国人との距離感がますます近くなっていると感じる人も少なくないようだ(写真はイメージです)

要約者レビュー

 残念ながら日本では、中国についていい印象を持っている人が多いとは言いがたい。

『中国人の本音』
工藤哲、 270ページ、平凡社、840円(税別)

 大半の日本人にとって、中国といえば反日思想や観光地での騒々しさが真っ先に思い浮かぶだろう。両国間には依然として歴史や領土の問題が山積し、緊張関係が続いている状態だ。とくに2012年秋に起きた反日デモをきっかけに、中国に対するイメージを悪化させた日本人が増えたのはまちがいない。

 しかし一方で、中国人が本当は日本をどう見ているか、しっかりと考える機会はほとんどないのではないだろうか。

 本書『中国人の本音』は著者が自ら汗をかいて歩きまわり、中国人の本音を引き出した珠玉の一冊だ。ここで触れられているのは反日デモの裏側や、東日本大震災に関する中国の反応といったものだけではない。SMAPや宮崎駿氏、高倉健氏の人気の高さ、『窓ぎわのトットちゃん』の記録的売れ行きなど、日本のポップカルチャーが中国でどう受け入れられているのかについても、しっかりと取材がなされている。あくまでも市井の人々に軸足を置き、庶民目線で語られているのが特徴だ。

 大上段に構えた政府や企業寄りの広報誌ではないし、嫌中を煽るドロドロした本でもない。中国嫌いの人でも、本書を読めば中国に対する印象が変わるのではないか――そんな期待を抱かせてくれる良書である。(田中 佐江子)

本書の要点

(1) 日本では中国の情報が伝わっておらず、中国では日本への理解が偏っている。今後重要になるのは、メディアや日中間を往来する人が、お互いの国の日常情報をしっかりと発信することだ。
(2) 『窓ぎわのトットちゃん』が日本の発行部数を抜いた人気の背景には、中国の教育制度に対する不満と、子供の個性を尊重する教育環境に対する強い憧れがあると考えられる。
(3) 日本政府の尖閣諸島国有化により発生した反日デモは、日系スーパーの破壊行動などに発展し、日本人の中国人に対するイメージ悪化はもとより、中国人自身も傷つく結果を招いた。