グローバリゼーションは経済的な恩恵をもたらす一方で、国家間、社会階層間などさまざまなレベルで格差の拡大という弊害を生んでいるともいわれる。我々は今後、もはやその流れを押しとどめることは不可能とさえいわれるグローバリゼーションと、どう向き合っていけばいいのか。反グローバリゼーションの論客として知られ、昨年末に著書『これは誰の危機か、未来は誰のものか――なぜ1%にも満たない富裕層が世界を支配するのか』が日本でも発売されたスーザン・ジョージ氏に聞いた。(聞き手/ジャーナリスト 大野和基)
グローバリゼーションは
プラスかマイナスか
(Susan George)
1934年アメリカ生まれ、パリ在住の政治経済学者、社会運動家。現在は民間シンクタンクのトランスナショナル研究所フェロー。76年刊行の『なぜ世界の半分が飢えるのか―食糧危機の構造』(朝日選書)が世界的ベストセラーとなり、以後、新自由主義的グローバリゼーション批判の急先鋒として知られる。近著は『これは誰の危機か、未来は誰のものか―なぜ1%にも満たない富裕層が世界を支配するのか』(岩波書店)。
――グローバリゼーションは恩恵とともに、格差の拡大のようなマイナス面ももたらしたが、全体的に見てマイナス面よりもプラス面を多くもたらしたと思いますか。
まず最初に、私は「グローバリゼーション」という言葉を単独では使いません。修飾語がないと、あまり意味がないと思うからです。この30年間、我々が経験してきたのは、「新自由主義のグローバリゼーション」であって、それは格差を拡大することしかしなかったと思います。
さらに、グローバリゼーションというのは誤解を招く言葉です。みんなが一つの幸せな家族であり、お互いの手を取り合って、約束の地に向かって行進しているような印象を与えるからです。それはまったく真実ではありません。
いままで何度も指摘してきましたが、グローバリゼーションというのはベストな人、ベストな国、さらにそういう国のベストな部分だけを見て言っており、残りの莫大な数の人や地域を除外しています。ですから全体的に見れば、グローバリゼーションは失敗しています。
例えば、中国は貧困レベルを減少させるのに大きな成功を収めましたが、インドはそれほどではありません。彼らは確かに自由貿易から恩恵を得ましたが、世界中の貧困という観点からは、グローバリゼーションから得たものはほとんどないのです。
――まったく同感です。