正論が悪い結果を
もたらしてしまうケースも

 ちょっとそれるが、余談を二つ。一つは、某大学でキャンパスを全面禁煙にした話。全面禁煙は正論だったが、正門を出たところで喫煙する学生が大量発生し、通勤通学で正門を通る教職員や学生の受動喫煙が深刻化した。その結果、キャンパスの一部を大学食堂株式会社に譲渡し、そこに灰皿を置いた。「ここはキャンパス内ではない」という理屈で(笑)。

 もう一つは少し難しいが、バブル崩壊後の銀行が不良債権処理を先送りした話。正論としては「借金を返せない会社は、担保を競売して清算せよ」というもの。だが、全ての銀行が担保を競売していたら、買い手がつかず、競売しても銀行はほとんど回収できない。揚げ句、銀行の破綻が相次ぎ、日本経済は壊滅していたかもしれない。

 大蔵省銀行局(当時)が、そこまで考えたか否かは不明だが、銀行が不良債権処理を怠っているのを「見て見ぬ振り」をしていた。その判断が日本を救ったのだと、筆者は考えている。もっとも、今でも正論を唱えて、当時の銀行を批判している人は多い。

 これについては、「1行だけが不良債権を処理していれば、その銀行は立ち直ったのだろうが、全行一斉に行ったら悲惨な目に遭っていただろう」という「合成の誤謬」も関係している。これに関しては話が複雑なので、機会があれば別途詳しく論じてみたい。

(久留米大学商学部教授 塚崎公義)