どんな小さな指摘をされても
逆ギレする困った部長

 その顛末について彼女が他の社員に話したところ、こんなコメントが帰ってきた。

「あの人はね、他人からちょっとでもダメ出しされると、ムキになって怒るのよ。もう放っておくしかないよ」

 確かに、よく考えてみると、部長の記事について他の社員が直接何かを言っているのを見たことはなかった。部長の文書は、時折あまりに情報不足だったり、重要な情報が抜け落ちていたりしていた。他の社員もそのことに気づいているようだったが、直接部長に訂正をお願いしたりする者は誰もいなかったのだ。

 彼女もそれからは部長と距離を置くようになった。一方で仕事は忙しいものの楽しく、ますますインタビュー業務に励んだ。そんな彼女を指定してくるクライアントも増えてきたある日、彼女の「得意先」のクライアント、しかも会社にとって最重要とも言える会社から、彼女にあるお願いがきた。

 彼女の勤務する会社が持っている、過去の文書のアーカイブの一部を使わせてほしいという申し出だ。その詳しい理由と、先方が望んでいるアーカイブの内容を聞いた彼女は、それに最も適した資料を探すとともに、責任者である部長にそのことを報告し、許可を得ようとした。

 部長にメールでその旨を伝えると帰ってきたのは、

「そういうことならば、しかるべき部署を通して連絡があるはずだから、そこからの連絡を待って僕が××さん(彼の部下で課長クラス、この件については全くの部外者)に指示するから。あなたはもうタッチしないで」

 というものだった。先方は、彼女に窓口になってほしくて、すべてのリクエストを伝えており、その旨もはっきり部長にフォワードしている。それに部長の言う「しかるべき部署」など、こんな小さい企業にはない。

 彼女は怒るというより、わけがわからなくなった。なぜ部長はこんなトンチンカンなことを言い出すのだろう。これを部長の言うとおりにしていたら、クライアントの意向に沿わない適当な資料が渡されかねない。部長も課長も事の経緯を知らず、先方がどういう経緯で何が欲しいかを理解しているとは到底思えないからだ。