依然多いNRAから議員への政治献金
オーストラリアは規制で無差別乱射をゼロに

 議員の消極的な姿勢も常に批判の的となっている。昨年のラスベガス事件直後、大統領選に出馬した経験もある共和党の重鎮ジョン・マケイン上院議員は、「私と妻は、ラスベガス事件の犠牲者とその家族に祈りを捧げています」とコメントした。上院情報委員会で議長を務めるノースカロライナ州選出のリチャード・バー上院議員(共和党)も、「私の心はラスベガス市民と、事件の解決に尽力した方々と共にあります」と語っている。

 両者とも現在のアメリカ政界で大きな影響力を持つ議員だが、上下両院の中でNRAから最も多くの献金を受けてきた2名でもある。ニューヨークタイムズの調査によると、マケイン議員がこれまでにNRAから受けた献金の総額は約774万ドル(約8億7000万円)。バー議員も約698万ドル(約7億8000万円)の献金を手にしている。

 NRAからの政治献金を受け取った議員はこの2名だけではない。調査報道団体プロパブリカなどの調べによると、100人の上院議員のうち49人が献金を受けていた。また、435人の下院議員のうち、半数以上となる258人にも献金が渡っていた。政治献金の額は議員によってバラバラだが、NRAの影響力が垣間見える数字だ。市民よりも腰が重い議員たちが銃規制で一致団結する日は、まだまだ先のようだ。

 社会背景が異なるとはいえ、オーストラリアの取り組みは非常に興味深い。1996年4月、オーストラリア・タスマニア島のポートアーサーという観光地にあるカフェで、同島の別の町に住む28歳の男がAR-15を客らに向けて乱射。別の場所でも発砲を行い、35人が死亡する事件が発生した。

 オーストラリアには「銃は開拓の象徴」という強い世論が存在したが、ハワード政権(当時)は、タスマニアの事件から2週間後に半自動ライフルやショットガンの購入や所持に非常に厳しい制限を設ける規制を開始し、同時に家庭にある銃の買い取りも実施した。65万丁以上の銃が政府の買取りプログラムに差し出され、銃を使った自殺は激減し、さらに96年の銃規制強化後のオーストラリアでは現在に至るまで無差別乱射が1件も発生していない。

 シドニー在住の小学校教師フィリッパ・グレイさんは2児の母でもあるが、普段の生活や職場である小学校で銃の脅威を意識したことはないと語る。「学校では教職員を対象に、事件や災害が発生した際に生徒を誘導するための訓練が定期的に行われていますが、無差別乱射を特別に想定した訓練は行っていませんし、そういった訓練をしないままでいられることを望みます」とグレイさんは語るが、このような言葉をアメリカでも聞くことができる日は来るのだろうか。