夫か、妻か――
飼い犬の「飼育権」巡る4つのポイント

 家庭内別居が2ヵ月目に突入すると、夫婦はメールでしかコミュニケーションがとれない状況になっており、治さんが私のところへ相談に来たのは、その最悪のタイミングでした。犬の処遇に悩む治さんに対して、私は日常の世話、飼育費用の負担割合、適切な飼育場所、そして飼い主の登録状況という4点に焦点を当てて確認し、アドバイスをしました。そのときのやりとりを、具体的に見ていきましょう。

「主にどちらがペットの世話をしていたのでしょうか。半分以上、世話を担当していた方が引き取るのが、ペット自身にとっても望ましいと思うのですが」

 第一の日常の世話について、私は治さんにそう尋ねました。そうすると治さんは「日常の世話は僕に任せっ切りで、動物病院へ連れて行くのも僕がやっているし、妻が病院へついてきたのは2、3回しかないです」と声を荒げたのです。日常の世話については、治さんは妻に「思い出してほしい。愛ちゃんはしーちゃんのことをちゃんと考えて接してきたのか!?」というメールを送ったことがあるそうです。

 しかし、妻は「しーちゃん。かけっこしてた。なかなかケージに入ってくれない。しーちゃんも寂しいのかな?」と、相変わらず写真付きのメールを寄こすだけで、治さんの問いかけに対してまともに返答しようとしませんでした。

「ペットの飼育費用はどちらがどのくらい負担していたのでしょうか。離婚すれば、どちらか一方が全額負担するのだから、今より負担が増えるのは確実です。少なめに出していた方が引き取ると、負担が増えて重石になるのでは?」

 第二の飼育費用について、私は金銭面の課題を投げかけました。治さんは「お金は僕がすべて出してきたんです。もし妻が引き取ったら、人間だけじゃなくペットの引っ越し代もかかることを本当にわかっているんでしょうか」と首をかしげながら答えてくれました。

 飼育費用についても、治さんは妻に「もし離婚したら、犬の飼育費は自分で払うようになるんだよ。それだけお金がかかるし、今までのようにパートのお給料は全部おこずかいにする、というわけにはいかなくなるんだよ!」とメールで問い質したことがあるそうです。しかし、やはり妻は「風呂場を見に行くしーちゃん。今朝は寒いらしい」と写真付きのメールを返してくるだけで、きちんと取り合おうとしなかったのです。

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