前回は、Drishteeのビジネスを例に、インドの農村ビジネスを紹介した。今回は、新興市場として、インドとよく比較される中国の農村部を取り上げる。 近年、中国内陸部の成長が目覚ましいが、今、その先にある農村部市場が注目されつつある。まだ多くの日本企業にとって未知の世界である中国農村部市場の実態と、中国特有のソーシャルビジネスの可能性について紹介する。

発展する中国内陸部の先に
見えてきた農村部市場

すげの ふみ/東京大学文学部社会学科卒業、コロンビア大学国際・公共政策大学院卒業。国際NGO中国事務所にて中国農村部の教育事業・地域開発に携わる。2011年に日本総合研究所入社。専門は、中国農村部など新興国貧困地域におけるソーシャルビジネスの立ち上げ、企業とNGOや社会的企業間のクロス・セクター・パートナーシップ構築。

 近年、中国内陸部が目覚ましい勢いで成長している。2008年に打ち出された4兆元に及ぶ政府の景気対策を背景として、今や内陸部の中心都市では地下鉄が走り、高級マンションが立ち並ぶ。

 週末ともなれば、ショッピングセンターで買い物をし、スターバックスで一休みする光景も、もはや日常のものとなりつつある。この成長を目の前にして、中国戦略の中核に内陸部を位置づける多国籍企業・日本企業が増加している。

 一方、このような繁栄は内陸部でも一部の都市に限られており、内陸部の大半を占める農村部には、約1億人とされる中国の貧困人口(1日の収入が1ドル以下)が集中している。事実、2010年における都市人口の平均年収が2万元(日本円で約25万円)であるのに対し、農村人口は4730元(約6万円)と、都市部と農村部の格差は歴然であり、中国農村部の購買力は低いとの見方が一般的である。