そりゃインドに投資できんわ…「世界最大の国」に幻想抱く日本人が知らない“残念な事実”インドのモディ首相 Photo:Bloomberg/gettyimages

インドは中国の代替となり得るのか?
専門家の間で浮上し始める懸念

 7月14日にトランプ大統領が、対ロシア制裁としてロシアと取引する国に「2次関税」として100%の関税を課すと発表した。ウクライナ戦争を続けるロシアを経済的に支える中国とインドを狙い撃ちしたものだ。

 この措置はウクライナ侵攻について中立的を守ってきた親ロ国インドにとっては寝耳に水の「不意打ち」となり、これまでのらりくらりと「コウモリ外交」でやってきたインド政府にとっては手痛いしっぺ返しとなった。

 2020年代に入り、インドは中国に代わる成長国として世界の注目を集めている。人口で中国を上回り、AIや半導体などの供給網再構築の文脈でも、インドへの期待は日本国内でも高まっている。

 安倍政権以降、日本ではインドを安全保障上の重要なパートナーとして位置づける傾向が強まり、中国に代わる存在として意識されてきた。

 しかし、世界的な注目の裏で、「インドは本当に中国の代替となり得るのか?」という疑問が、専門家の間で懸念として浮上し始めている。

 筆者は2022年12月にダイヤモンド・オンラインに寄稿した『アップルがiPhoneをインドで生産、それでも「中国の代わり」になれない理由』において、産業面でインドが中国の代替になり得ないことを指摘した。

 現在に至っても、当時提示した問題点は大きく改善された様子は見られない。

 米カーネギー国際平和財団のアシュリー・J・テリス氏は、2016年に「インドは超大国にはなれない」と明言し、その理由を国家レベルで論じている。
https://carnegie-production-assets.s3.amazonaws.com/static/files/Brief-Tellis-India_Leading_Power1.pdf

 さらに、最近発表された論文でも、テリス氏はこの主張を変えていない。
 https://www.foreignaffairs.com/india/indias-great-power-delusions

 本稿では、インドが「大国」になれない構造的な理由と、日本がそのインドとどのように関係を築くべきかについて考察する。