だが、日銀に対し積極緩和策を求めていた安倍晋三首相の意向で、まるで “パラシュート”部隊のような形で就任した黒田総裁と、日銀生え抜きの幹部との間には、いまだぎこちなさが残っていた。

 そんな状況を知る政策審議委員経験者が、黒田総裁にこう話しかけた。

「安倍首相に頼まれても、再任は受けるのはよく考えたほうがいいですよ。9月に自民党総裁に3選されても任期は3年だ。その後は誰が首相になるかは分からないですから。そうなると、今までのような政治の後ろ盾がなくなる。大丈夫ですか」

 この時点では、黒田総裁まだ再任を応諾していなかったが、「黒田さんはえらく真剣な表情で話を聞いていた」と、この審議委員経験者は明かす。

 政権との関係が今は盤石でも、3年後、「2%物価目標」を実現していなければ、「追加緩和策」という難題を求められる可能性もある。逆に、デフレ脱却が順調に進んだとしても、日銀が短期金利の利上げなど「出口戦略」に踏み出そうとすれば、政治に封じられてしまう可能性も否定できない──。

 黒田総裁の頭には、そんな思いがよぎったのかもしれない。

 実際、約20年間にわたって続いてきた「金利ゼロ」の状況は、日銀が積極的に金融緩和を進めた“結果”というわけではなかった。

 政治との激しいせめぎ合いの末のことだった。

「うまい言い方で説明できた」
効果見通せないまま「苦肉の政策」

 次ページの表を見ていただきたい。これを見れば分かるとおり、「金利ゼロ」の歴史は、「政治vs日銀」の“20年戦争”の歴史でもあった。