目立ち始めた「大中華礼賛」
人間関係にも影響及ぼす

 経済の対外開放が進み、「一時はピンク色に薄まった」とまで言われた中国だったが、再び「レッドチャイナ」の「赤」に戻りつつある。その一つの重要なキーワードが、「中華民族の偉大な復興」だ。

 WeChat(微信)には、個人の発見や関心をその都度アップロードして仲間に伝えるFacebookのような機能があるが、そこで最近目立つのが「大中華礼賛」だ。

 上海の日系企業に勤務する中国人幹部が、一変して「上海礼賛」をし始めたのには驚かされた。日本の本社勤務の在日中国人ですら「中国はすごい」と連呼する。その一方で、「さすがに違和感がある」と嫌悪する中国人も出てきた。

「中国人の思想や考え方は、すっかり分断されてしまった。それどころか、一部では激しい対立すら生んでいて、人前でうっかり自分の意見を言えなくなりました。WeChatでの発言も注意しています」

 そう語る上海人男性の趣味は、カメラを抱えての海外での一人旅だと言うが、旅の本当の動機をこう打ち明ける。

「比較的自由を謳歌できた上海でも、今では息苦しくてたまらない。数ヵ月に1度は“自由な空気”を吸いたい」

 今では、日本の人口に匹敵する年間延べ1億2000万人が、中国から海外旅行を目的に出国する。そこに映し出されるのは、あまりに二極化した中国の「政治」と「経済」だ。

 国民を富裕にしたという意味では中国は大きく前進したが、その代償となるのが自由や権利、法の支配を遠ざける「政治的後退」である。「世界的にも前代未聞の現象」に身を震わせながらも、さしずめできることといえば海外旅行での憂さ晴らし。大挙して海外旅行に繰り出すその姿には、そんな悲哀すら見て取れるのだ。

(ジャーナリスト 姫田小夏)