正月休み、「今年の自分は一味違うぞ」と思いながらも、今日はまだいいかとばかりにだらだらとスマホに時間を吸い取られている。そんなことはないだろうか? だがその原因は、意志の弱さではなく、私たちの注意を奪うこの世界のメカニズムにあるのかもしれない。18言語で話題の世界的ベストセラー『一点集中術━━限られた時間で次々とやりたいことを実現できる』から、訳者の栗木さつき氏に話をうかがった。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)
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何が人を虜にするのか?
――本書では、人がいつのまにか快楽に引き寄せられてしまう心理が描かれています。なかでも、現代人が陥りやすい「最大の悪習」は何だと思いますか。
栗木さつき氏(以下、栗木):無意識にスマホを何度も確認してしまうことですね。通知が鳴るたび、あるいは鳴っていなくても、つい画面を開いてしまう。こうした行動が、私たちを「快楽の虜」にしています。何か新しい情報があるかもしれないという期待が脳を刺激してドーパミンが出ることで、この行動が習慣化してしまいます。
私自身、翻訳をしているときでも調べ物をしようとブラウザを開くと、ついそのままSNSを覗いてしまうことがあります。本書を訳すことで「一点集中」の重要性を誰より痛感していながらも、こうした誘惑に抗うのは難しいんです。
では、どうすればいいのでしょうか。以下は本書からの引用です。
だが私にも、そんな強さはない。目の前に、揚げたてあつあつのチーズソースがけフライドポテトを置かれたら、一つ残らず食べてしまうだろう。
とはいえ、それが魔法のように目の前に出現しないかぎり、べつにフライドポテトなど食べなくても1日をすごすことはできる。フライドポテトを食べなくても、何の問題もない。――『一点集中術』より
著者が言うように、目の前にあれば食べてしまいますが、なければ食べずに済むのです。これはテクノロジーも同じです。「意志の力で我慢しよう」とするのではなく、物理的に距離を置く「フェンス」を設けることが、悪習を断つ唯一の道です。
誘惑と距離を置く
――具体的には、どのような「フェンス」が有効なのでしょうか。
栗木:最もシンプルなのは、スマホを隣の部屋に置くことです。私は仕事に集中したいとき、スマホを仕事部屋から追い出してしまうようにしています。また、夜は電源を落とし、アラームはスマホではなくアナログの目覚まし時計を使うことも本書の教えに従って実践しています。
「『誘惑』と距離を置けば置くほど、私たちは意志の力を保つことができる」と著者は言います。
私は趣味の登山中、目の前の一歩に集中しないと怪我をするため、自然と一点集中の状態になります。その間、スマホを見なくてもまったく困りませんし、むしろ下山後は頭も体もスッキリとしています。
登山中に集中できるのは、意志が強くなったからではなく、注意を奪うものが物理的に入り込まない環境に身を置いているからです。
こうした「環境を先につくる」という考え方こそが、私たちの注意を奪うテクノロジーが蔓延する現代において、時間を取り戻すためにできる唯一の方法なんです。
(本記事は、デボラ・ザック著『一点集中術━━限られた時間で次々とやりたいことを実現できる』の翻訳者インタビューです)









